バス恋。 (ページ11)

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「あれ??今日1人なん珍しない??」

挨拶を飛ばしてそう声を掛けると、松井は一瞬嬉しそうな顔をした後すぐいつものおふざけモードに戻る。

「なんだ美咲か～」
「オイ明らかに不満感出すな??泣くで??」
「久しぶり奏くん」
「久しぶり新、相変わらずお熱いのぅあらかんは♡」

その言葉に「うっさい阿呆!!」と照れながら返すと、新がさらっと指を絡めてくるから本来の目的を忘れかける。

「あ、てか水澤さん知らない？」
「水澤ちゃんなら風邪で休みらしいで、熱出とるらしい37.5」
「発熱系の風邪！？」

あ、これ何も聞いとらんな。

さらりと交換した水澤さんの連絡先を松井に送り付ける。

松井が一人の女の子を何かの習慣で繋ぎ止めるのは、子供の時から仲良かったうちと新も見た事ない初めての事態で。

この前の様子を見れば、水澤ちゃんが嫉妬しとったのも丸分かりやった。多分水澤ちゃんの方は、時間立てばもうすぐ気付く。

「美咲これ、！！」

松井が近付けた液晶には、シンプルな珈琲がカップから湯気を立てたアイコンが映し出されている。

「例の水澤ちゃんの連絡先や、なんか聞いてみたら？んでついでに看病しに行ったり♡」

ちょっと強引やけど、松井のうざ絡みを喜んでるならきっと、このまま松井が水澤ちゃんの心を。

「美咲、任せたよ」
「さすが長女!!よくできました!!」

嫌じゃないし、嬉しかったけど、その分。

人を頼るって言うのが分からなくなって、何度も何度も新を傷つけたうちに、なんだか似てて。水澤ちゃんを重ねて。

相変わらずのお節介に苦笑いしながら松井を送り出すと、慌てたようにバスに飛び乗って行った。