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「おかえりがりさん、本買えた??」
「ばっちりな、超マイナーな会社が出してるから時間掛かったわ」
猪狩先輩の手で選ばれた本は、私も気になっていたミステリー小説だった。
「良かったねぇ、じゃああとは2人でねぇ」
「明日のレッスン遅れんなよ〜」
どう考えても遅れるタイプじゃない作間先輩は苦笑しながら、その長身を揺らして歩いて行く。
「………えーと…」
「腹減ったわ、俺もなんか買ってくるから待ってて」
先輩は何も気にしてないかの様に、コンビニ内を物色する。
ポケットの中のスマホが鳴り響き続けて、耐えかねた私は画面を開いた。
りょーA大丈夫??今どこ??
そうだ私、お菓子買ってくるって出て来て……。
「………え、」
後ろから猪狩先輩の顔が覗き込んで来て、ばっと顔を逸らした。
「その'りょー”ってフルネーム何、??」
先輩の感情が珍しく顔に出ている。紛れもなく、焦っていた。
…………言える、わけが無い。貴方と同じグループで、色気担当の優しい同学年の橋本涼くんです。なんて。
口が強ばって、喉が渇く。ごくりと喉を鳴らすと、ハニーヨーグルトに手を伸ばした。
固まり始めた中身を慌てて掻き混ぜるけど、紙スプーンは蜂蜜が加わって重くなったヨーグルトを上手く受け止められずに、くにゃりと折れた。
「駄目、」
人って水分取らせると嘘付ける余裕出るから、とヨーグルトのカップに添えていた手を握られた。
「離して、ください、」
「無理だね」
言って。じゃなきゃ離さない。
まるでそういう様に、手に力が篭もる。
付き合ってないのに、浮気されたみたいな、先輩の目が弱く痛かった。
「…………先輩のグループの、橋本涼くんです…………」
2人の合間に、沈黙が流れた。
やっとの事で手を離した猪狩先輩は、ひと言だけ告げる。
「…………ごめん怖がらせて、」
罪悪感がじわじわ広がって、頭を横に振る。
「私こそごめんなさい、でも私が好きなのは先輩で、」
「その先輩と同じグループの人と仲良くなってる時点で気持ち俺だけに向いてないでしょ」
「それは、」
「しかも俺、口出せる立場じゃないし」
両片想いの先輩後輩。独占し合うような彼氏彼女では無い今、冷静に考えれば猪狩先輩は他人にもなり得る。
「今日22時、無しでいい？ちょっとショック」
ちょっと所じゃなさそうなショックを受けて出ていく先輩を、私は何も出来ずに見ていた。
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氷雨(プロフ) - 理子さん» コメントありがとうございます。 氷 雨 。(@His_x_o_Ame)です ! (2021年12月18日 10時) (
レス) id: dfb674a32e (このIDを非表示/違反報告)
理子(プロフ) - Twitterのユザネを教えて欲しいです！ (2021年12月18日 9時) (レス) @page6 id: 69b2f71674 (このIDを非表示/違反報告)
氷雨(プロフ) - みかんさん» コメントありがとうございます。大学生になったのでずっと書きたかったシチュエーションを書いてみました笑 楽しんでもらえてて嬉しいです！ (2021年9月10日 12時) (レス) id: 292262d02a (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - ほんと素敵な作品で、続きが気になります！猪狩くんからのちゅーにドキドキしちゃいました、、！ (2021年9月8日 23時) (レス) id: 7b49f138be (このIDを非表示/違反報告)
氷雨(プロフ) - 8888さん» コメントありがとうございます。楽しんでいただけていることに凄く安心しました、嬉しいです！これからも応援よろしくお願いします。 (2021年2月27日 8時) (レス) id: 2ebab5b447 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：氷 雨 | 作成日時：2021年1月11日 19時
