Don’t Wanna Fall In Love【HS】

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結局、期待していた"聞きたいこと"は

今度の課題に関することで、

僕自身に向けられた質問ではなかった。



(＿＿気まずそうだなあ)



だからか、あらかた説明を聞いて一息ついた

Aちゃんはそわそわと落ち着かない様子だ。

さっきからお冷をおかわりしまくっている。



「お腹壊すよ」


「水飲むの好きなの！」


「あ、本当？ ……でも寒そうだよ」



ふれた指先が冷たい。

Aちゃんは一瞬驚いてびくりとしたけれど、

「もう外出ようか」という言葉に安堵したようだ。

素直に腕をさすって「冷房が効きすぎてるよね」と

かわいく笑いながら伝票を取られ、慌てて奪い返す。



小さな机を挟んで問答するのも気が引けて

「じゃあ絶対お店来て」と震える小指を差し出すと

自分が思っていたよりもあっけなく結ばれたから

なんだか涙が出そうになった。



「ジミニありがとう、先に出てるね」



何度も礼を言う君を扉の向こうに

見送って、一人レジに立つ。


僕は一生あのままでも平気だったけど、

他愛もない話は案外メッセージでし尽くして

しまったから、今更話すこともなかった。


それでも集まって話していられるのが

友達、というものなんだろうけど。



(友達のまま、じゃあ困る、)



電子決済で携帯を差し出したその時、

外からなにやら賑やかな声が届く。

一人は明らかにAちゃんだと

思うけれど、もう一人はいったい誰だろうか。



疑問符を頭に浮かばせつつ扉を開けると、

まぶしい太陽を背に立つ人影がふたつ。



「＿＿あら、餅じゃない」


「げ」



セミロングの毛先をいじりながら

つまらなそうにしているこの女は

グループ課題のメンバーだったミン・ユンジだ。



「餅って呼ぶな！」


「A、餅と遊んでたのね」


「そうなの」



ちなみに、テヒョンと同様幼馴染。

保育園から小中高、あろうことか大学まで

同じだなんて、本物の腐れ縁だよ。


切長の目を細めてしらっとしている態度は

ユンジの兄さんにそっくりだ。



「ユンジちゃんは何してるの？」


「散歩してただけ」


「…ジミナあ」



一言だけ呼んで見つめてくるAが

ユンジにひっついて腕を絡ませる。

きらきらと目を輝かせているあたり、

『せっかく友達に会えたから誘いたい』

とでも考えているんだろう。



「ユンジ」


「何」


「……テヒョンも誘うから遊ぼう」



ああ、計画倒れの音がする。
　
　
　

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