【爆豪勝己】仮面王女の鎖

18. 儚い ページ20

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『名前を出すな』






どういう意味だ？

そんな事を考える間も無く、スーツの男は
こちらに向かって来る。

Aの顔は少し強張っている。





「お嬢様、お迎えに上がるのが遅くなり
大変申し訳ございません」




俺らの前でひざまずき英語で謝罪するその男は
予想通り、Aの執事だった。




「…いいえ、大丈夫よ。だから顔を上げて」


コイツは椅子から降りて、男に立つよう促す



顔を上げた男の視線は、俺に向けられる。
警戒心はむき出しだ。そりゃそうか。



そして、



「貴様…日本人か」


奴もまた日本語を話せるようだ。



「だったら何だ、文句あんのか」

「我が主のご令嬢に何をした」

「あ？？何もしてねぇわクソが」



これが仕事なんだろうが腹立つなコイツ。




「ライズ、違うの。

私が他の人に声を掛けられて困っていた所を
彼は助けてくれたのよ。

日本人だったから嬉しくて…
私から声をかけてしまったの。ごめんなさい」




俺を庇うように説明するA。
何でお前が謝っとんだ


「声を掛けられた？男ですか？

彼らは今どこです？？
お怪我はありませんでしたか？？」


さらに怪訝そうな顔をする男、ライズ。


「知らねェ。俺がぶっ飛ばしたら逃げやがった


そもそもテメェがコイツ迎えに来んのが
遅ェからこんな事になったんだろうが

何でテメェが怪訝そうな顔しとんだ」




「いいんです爆豪さん。ライズを責めないで」



「爆豪……？」


ライズは目を少し見開いて、
Aの口から出た俺の名前に反応する。



「あ？んだテメェ」





「…いや、何でもない。

貴様の言う通りだ、爆豪。礼を言う。




お嬢様、車をすぐ外に準備しております。
お乗り下さい」



「え…えぇ、それでは爆豪さん


お話できて楽しかったです。
またいつか…お逢いできれば良いですね。

それでは、




…さようなら。ありがとうございました」








その儚い悲しそうな笑顔が



“助けて”




そう言っているように感じたのは
俺の希望的観測だろうか。






店を出るまでの10秒弱の間に


Aが俺を振り返ることは無かった。





もう2度と、会えねェんだろうな。

あんな意味深な爪痕残しまくりやがって。





アイツが遠い存在だと感じれば感じるほど

気になってしょうがねェ。何もかも。

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