【禪院真依】私の初恋の話 (ページ7)

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俺が嫌いな男の話ページ7

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毘「真琴が居なくなっただァ？
フン…遅めの反抗期が来たか。

…直ぐに探せ。この家にアイツは必要だろう」

当主、禪院直毘人は珍しく機嫌が悪い。
理由は明白。真琴の家出だ。

弟であり、真琴や真希、真依の父である扇は
変わらず顔を顰めていた。

直哉はというと、笑みを隠し切れない。
目障りだった真琴が居なくなったのだから。

扇「探す必要は無い。

どうせ…いずれは戻って来るだろう。
少なくとも貴方が健在な内に」

「扇のオジさんの言う通りやわ。
別に今すぐ真琴くんが必要なワケ無いし」

2人とも、次の代の当主を狙っている。
次期当主と言われている真琴が消えた方が
自分達にとって都合が良いのだ。

直毘人も2人の考えは分かっていた。
そしてため息をつく。

その様子に直哉は腹を立てる。

扇や甚一は別の用事で呼ばれて、部屋の中で
親子2人になった時

「大体なぁ、真琴くんの何処がいいねん。
アンタの息子はアイツやない。俺や。

俺やってアンタの術式を受け継いでんのに
何でアイツやねん」

不愉快そうに直哉が言った。
直毘人は驚く様子も無く、笑う。

毘「…アレには才能だけじゃない。

人望がある。人を動かす力だ。
無駄を嫌い、誰に対しても態度を変えない。

口数は少ないが、頭の回転が早い分
組織を動かすのに合理的判断が出来る。

オマエとの大きな違いだ、直哉よ」

思い当たる節なら数え切れないほどあった。

何やねん。
みんなしてアイツの名前ばっか。

俺やってそんくらい出来る。
何で誰も俺の事を見いへんのや。

五条家は既に同年代の五条悟が当主となり
一族を率いている。

恵まれた環境に、恵まれた立場で生まれたのに
何故直哉には劣等感しか生まれないのか。

もう1人の恵まれた男のせいで。
全ての注目が2番目にしか集まってこない。

「…俺やって十二分に器はあるやろが」

毘「そう思うなら証明してみせよ。

俺が死ぬまでにな」

証明なんて要らん。

アンタが死んだ時
アイツも死んでりゃええんやから。

そもそもアイツは帰ってこんやろし
どうせみんなすぐに忘れてくれる。

そんな歪んだ憎悪が直哉の心を満たした。

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直毘人が死亡し、あの遺言が読まれた後。

直哉はある部屋から女が出て来るのを見た。
真琴の部屋だった。

部屋の中は綺麗に掃除されていた。

それが異様に腹立だしかった。

『…ダボが』

直哉は部屋の本棚を勢いよく倒し、
その場を立ち去った。