【五条悟】ブラックスマイル 2

70. 異常な愛 ページ36

【五条side】





初めてだった。


彼女が助けを求めたのは。
硝子にも、傑にも、そんな言葉をかけた所は
一度も見たことが無かった。



震えて、掠れた声だった。
最後まできっと迷い続けていたのだろう。



ドアを蹴破って中に入ると
彼女に馬乗りになっている男の姿。



ナイフを持っているが、ソレには
血がベットリ付いていた。



落ち着け僕。殺すのは後で良い。


「…まずそこからどこうか」

男「…来るな……！！

俺はこの女と死ぬ…
少しでもそこから動けばこの女をすぐ殺す」




前会った時の余裕の笑みとは打って変わって
何かに怯えたような顔。手は震えている。


人を殺した事なんて、無いよな。普通。
でもその重みを、僕も彼女も知っている。



『…やめましょう、もう』

男「黙れ！！！


お前は何でッ…

大人しく俺のものになれば良いだけだろ
なのに何で…！！！」





その時、思った。



この男は

Aを心から好きになってしまって
こうなったんじゃないかって。


そうでなければ
他の女を自分好みに整形させればいいだけだし

そもそもこんなに辛そうな顔をしない。



この男も、僕も、ある意味同じだ。



「…彼女の誕生日、知ってる？」

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