【五条悟】ブラックスマイル

36. どうか貴方は ページ38

【貴女side】



翌日の出張先。



「あ…そぼ……」


1級案件だと聞いていた。

現に喋る呪いは大体そのくらいから。


だけど、あまりにも弱すぎる。


呪力も、実際の強さも4級レベル。
術式なんて使わなくても余裕で倒せる。


しっかり祓ったはずだった。

なのに、体が消えない。
雑だったのかと思い、細かく身体を砕いても
肉片のようなそれは消えなかった。




呪霊じゃないの？こんなの初めてだ。
何かが受肉した可能性もある。

とりあえず肉の欠片を１つ拾っておいて
硝子に渡そうと思った。


その翌日の任務も全く同じ。
消えない4級レベルの呪いを祓っただけ。

言い方が高慢に聞こえるかもしれないけれど
こんな任務、私じゃなくても務まる。

むしろ恵達の＿＿少年院の方が心配だ。
無事に任務は終わったのかな。


高専に昼過ぎに帰ってくると野薔薇に会った。



「あら、Aさん今帰って来たの？」

『うん。恵と悠仁は？』

「伏黒は知らない。



…虎杖は………昨日死んだわ」


落ち着いているように見えて
心の何処かでは暗く、悲しんでいる


そんな感情が声から読み取れる。



『…そう。大変だったのね』

「…Aさんは
仲間が死んだ時、どうやって切り替えるの？」




…仲間が死んだ時。


高専にいた時に誰かの死を経験した事は無い。

1度硝子と歌姫さんが死にかけたくらいだ。

私の周りに、呪いに殺された知人は
誰1人としていなかった事に初めて気づいた。



私は…知っている人が死ぬのを見たく無かった



だから逃げたんだ。失う事が怖かった。

そしてその後、誰かを尊ぶことをやめた。

命の重さは全員同じで、誰が死のうが
私には関係のない事だと思うようになっていた

その考えは、きっと今でも残っている。
だから感情を露わにする事をどこかで拒んだ。




『ごめんね…分からない。

だけどね野薔薇。私みたいにはならないで』




誰かが死んだ時、感情を露わにしない分
私はいつもその死が納得出来るものかを考える

それが正しい事かはわからない。
だけどいつか、答えが出せたらいいなと

複雑そうな野薔薇の顔を見て思った。

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