【五条悟】ブラックスマイル

35. 消えない ページ37

【貴女side】







『命を削る』縛りを除いた中で

限界まで極められた、おそらく天与呪縛の彼。
あれだけ強化された身体能力に敵う人間は

五条悟、ただ1人しかいないと思う。


「知らない」の一言も答えなかった事を
考えれば、きっと彼が殺したのだろう。




私が怒ると思ったから言えなかったのかな
そんな事は無いのに。



あの人は術師殺しだ。もしも自分や仲間が
襲われたなら、迷わず彼を殺すだろう。

私はそれを間違いだとは決して思わない。
術師として正しい選択だと思う。




それなのに、





あの大きな手で触れられた感覚が

あの口から発せられた言葉が

あのたまに見せる寂しそうで優しい目が

こんなときに限って鮮やかに蘇ってくる。


家族について聞いたことがある。




『ガキがいる』、直後に冗談だと言ったけど
本当の事だとすぐに分かった。


後に続いた言葉は


『自由に生きろ』だった。


どこか優しい、寂しい目をしていた。
少なくとも私にはそう見えた。




あの目は私に向けられたものじゃない。



どうでもいい、なんてきっと嘘だ。

きっと大切な存在だった。奥さんも、恵も。



だからこそ、私を側に置こうとしなかった。
　


なら私が出来るのは

恵を守ることくらいだと思う。





私を助けようとしてくれた事に報いるために
あの人の守りたかったものを…守る。


それくらいしか、今の私が呪術師として
生きていく理由が見つからない。






………


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mona

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