【五条悟】ブラックスマイル

24. 不在着信5件 ページ26

【貴女side】




恵の言葉は、また私の頭を殴ってきて

空っぽな中身には余計に響く。




私は…死にたかったんじゃなくて
誰よりも生きたかったのかもしれない。


だからあの日、

契約という名の『縛り』を課した。
無意識のうちに、解けなくなった縛りを。


だけど生きてて良い自信がなくて
自信をつけるための理由も見つからなくて

どんどん自分が嫌いになってしまった。


『…恵』

「何ですか」


これからどう変わっていけば良いかなんて
全く分かんないけど


『少しずつだけど…変わろうと思う』



少しずつ、受け入れていきたい
本当の自分を。


恵は私を見て驚いたような顔をした後


「…応援しますよ」


少し口角を上げてそう答えてくれた。


さっき手を握った時にも思った。
…よく似ている。


彼の苗字が伏黒だと知る前から
顔立ちを見てそう思っていたけれど

まさか親子だったとは、流石に驚いた。
きっと恵は…何も知らないのだろう。



その日のうちに他の呪いを祓い
3日間の予定だったのが明日帰れる事になった。


「結構広いですね」

『うん、じゃあ恵はこっちの部屋ね』


経費削減だそうで恵と相部屋なのは驚いたけど
部屋が広かったのでお互い気にはならなかった



旅館のお料理のメニューが目に入る。
好きなものを頼んで持ってきてもらえるらしい


『恵、何か食べたいものとかある？』

「何でもいいですけど…
あえて言うなら和食が良いです」



聞けば生姜に合うものが好きらしい。
ジンジャーエールはまた話が違うという。



食事を待っている時に
私の携帯に電話がかかってくる。

画面には『五条悟』。


少し席を外して電話に出る。


『はい』

「まさかと思うけど
恵と同じ部屋とかないよね？？」

『そうだけど。代わろうか？』


小さく舌打ちが聞こえる。



「いやいいよ。補助監督誰？伊地知？？」

『今回は私と恵だけ』

「そっか、いつ帰って来る？」

『早く終わったし明日帰るよ』

「マジ？優秀だね
出来るだけ早く帰ってきてよ寂しいから」

『ご飯冷めちゃうから切るね、お休みなさい』



ブチっと強制的に電話を切る。



「…五条先生ですか」

『どうして分かったの？』

「なんか早く会話終わらせようとしてたんで」



まだご飯が来てないテーブルをコツコツ叩く恵


『…私の事からかって楽しんでるのよ、彼』

「そうですかね」

『まぁ何でも良いんだけど』





そう、何でも良い。

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