【五条悟】ブラックスマイル

23. 立ち上がる理由 ページ25

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「さっきの…どうやってやったんですか」

『領域展開？


…イメージするの、具体的にどうしたいか』


まるでスマホをスクロールするみたいな
指の動きと共に説明される。分かんねえ。


それに


「…言われるがまま他人の為に命掛けれるのが
俺には分かりません」



そんな指示と義務だけで
どうしてそこまで出来るのか？



『…守りたいと思える世界も、人も
どこにも存在しないからじゃないかな

自分の人生もどうでも良いし
命を賭ける事は私からすれば大した事じゃない

本当に恵の言う通り、空っぽすぎてね。
逆に何で生きてんのって自分でも不思議かも』



この人は

呪術の才能もあって、顔だって異論ない美人で
頭が格段悪いという事も無いはずなのに

何でここまで自己肯定感を失くしているのか
俺には理解できない。


…そもそも


「生きる理由って、誰にも分かんないでしょ

最初から決まってるもんじゃ無くて
自分と向き合わなきゃ多分見つからないし

最後死ぬ時に納得できる人生そのものが
生きる理由になってんじゃ無いんですか？

だから前提として自分に『どうでも良い』
とか連呼してる間は無理ですよ」


彼女は少し驚いたような顔をしていた。
笑顔以外で、初めて見る表情だった。


『…じゃあ恵が今ここに立っている理由は？』

「俺は…」


俺が術師になったのは
あの人との『契約』みたいなもんだ。

それでも


「姉の呪いを解いて…幸せになってもらいたい

ありふれた普通の幸せを…掴んで欲しい。


そして…あの人みたく不平等に生きる善人を
少しでも減らす為です。


俺の生きる理由はその後の話だと思ってます



…俺だって自分のことが好きじゃない。

それでも向き合わなきゃいけないんです。


正しい決断かなんて分からない。

もしかしたら…あの人が言った事は間違いで
禪院家に行けば幸せになれたかもしれない。


そうだとしても

今ある限られた力の中で
自分が1番納得できる行動を取ることが

きっと最後に答えを導いてくれると
俺は信じてますから」


その瞳が、一瞬揺らぐ。


『…そっか

恵は…私よりずっと立派だね
すごく勉強になる』


彼女は今までとは違って

どこか悲しそうに、笑ってみせた。

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