【五条悟】ブラックスマイル

31. 気まぐれ ページ33

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「…このガキか？」


「ああ、五条家の遠縁だが
相伝の術式が刻まれているらしい。

高専から姿を消したと思えば
銀座でホステスになってんだと

何考えてるか分からんが
このガキの首に数億かける奴もいる

良い話だと思わねぇか？」



そうだな、だから受けた。
簡単な仕事じゃないと分かっていながら。





だが…

「_____抵抗しねえのか」


ホテルに連れ込む時も
こうやって腕を切られた時も
馬乗りになられてる時も


このガキはずっと笑ってやがる。


『もう、楽になりたいんです』



そう答えて呪具を握る俺の手を両手で掴んで
上に持ち上げた。


『ここを狙ってください』


笑顔で心臓の部分を刃先でつつく。

その手は…微かに震えていた。



……家族も捨てて、自分も捨てた。
そうやって生きてきた。


このガキも、自分を捨ててるんだろう。
だから何だって話だろうが

_____なぜこんなにもこのガキに情が湧く？


気がつけば、その呪具を放り投げていた。


『何で…』

「俺にも分からねえよ


ガキ。オマエ…
…本当にやりたくてこんな仕事してんのか」



『…』


横を向くその顔に長い髪がかかって
表情は読めねえが

ただ、確実に笑ってはいなかった。



「…金に困ってんのか」

『確かに、ここで働かなくても生きて行ける
くらいのお金があれば良かったんですけど…』



彼女に聞くと術師時代の給料の殆どは
クズ親に取られていたらしい。


「辞めて他の仕事しろよ」


『出来るだけ身分を隠したいんです

貴方みたいに殺しに来る人がいるし…
見つかると面倒な人もいるので。

あと今辞めると違約金発生しちゃいます
あのお店結構ヤバい組織とも繋がってるので』

そんな事もヘラヘラ笑って言う様子に
思わず舌打ちをする。



「なら、俺がお前を買う」


『え？』


簡単な話だ


「あの店から出れば後は偽名使うなり
その派手な髪を染めるなりすりゃあバレねェ」


近いうちに星漿体のガキを殺せば金が入る。
額は足りるだろ


『どうして…助けようとしてくれるんですか』

「ただの気まぐれだ。じゃあな」



『らしくない』。違いない。

別にこのガキに何のリターンも求めていない。
それでもどこか放っておけなかった。


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