【呪術廻戦】きっと、いつか。 (ページ15)

今日:2 hit、昨日:5 hit、合計:144,239 hit

呪いの無い世界なら 2 ページ15

・

「…どこにあったんですか？」

『校門を出てすぐの所に落ちていましたよ』

「では僕の借りたものだと分かったのは」

『図書カードをしおり代わりに挟んでたので。

それに私、図書委員なので
よく来る人の顔は何となく覚えてるんです』

初めて話した。
なのにどこかその笑顔が懐かしく感じる。

理由はわからない。とりあえず
変な趣味を持っていると思われているのだろう
こんな本を読んでいるだなんて。

「…この本は偶々手に取っただけで

こういうのを信じているわけでは……」

気づけばその言い訳をしようとしていた。

だが彼女は
ずっと笑ったままだった。

そして僕に聞いた。

『その手記に続編がある事は知ってますか？』

「…え？」

『誰が書いたかは不明なんですけど

おそらく著者は女性で
呪いによって殺された恋人を想いながら
残したものなんだと思います。

後半はそんな話を中心に残してるんですよ』

…彼女は、この本を読んだのか。

「所詮、作り話の世界でしょう」

そう言えば、この話は切り上げられると
思っていた。

本当は…続きが気になるけれど。

だが

『そうですか？

私はそうは思いませんよ』

そんな意外な言葉が返ってきた。

『きっと呪いは存在していて

呪術師なんて職業もあったんだと思います。

そうじゃなければ、こんな奇跡は起こらない』

奇跡…？

「どういう意味で…『続編、貸しましょうか？

私の家にあるものなんですけど』」

「……お願いします」

言葉を遮られたままで気分は良くないが
続きを読みたい気持ちが勝っていた。

『１つ、条件があります』

彼女は綺麗な顔でニコリと笑う。

「何ですか？」

『貴方を…

建人さんって呼んでもいいですか？』

一体何が目的かはわからない。
それが彼女にとって何の利益があるのかも。

「…どうしてですか」

『それは続編を読めば分かります』

「…そうですか」

『了承してくれますか？』

「好きにして下さい」

『ではお貸ししますね、明日図書室で』

不思議な人だ。

どこかその笑顔も話し方も懐かしい。

その日の別れ際、

『…建人さん』

「何ですか」

『また、明日待ってます』

その笑顔は
夕陽に照らされた海面のように輝いて見えた。

「はい。…また明日、三山さん」