宣告ってなに ページ49
とうとう振り落とされた。運動場の芝生に落ちたので大した怪我はない。
「悪いな、絨毯が不機嫌みたいだ」
寮長さんは気を使ってくれてるのかもしれないが、暴走の理由は「僕が嫌いだから」で間違いないだろう。現にさっきの衝突は不注意が起こしたものであって、絨毯が暴れた訳ではなかった。
それに自分がそういう体質だと薄々気付いてた。
絨毯もそうだが、ルチウスや他生徒の使い魔から邪険にされるし、野良の動物なら近付いても来ない。
ちょっと切ないが仕方がないだろう。
『暴走とはいえ絨毯で飛ぶの楽しかったですよォ』
「そうか？それなら、また別の日に乗ろう！その時なら機嫌直してるだろうし」
『楽しみにしてますよォ。じゃ』
落ちたカバンを拾い上げ、軽く手を振って寮に帰ろうとしたとき、
「まって！！」
突然ぐいと手を掴まれた。
彼も華奢な体型だが筋肉質らしく、案外握力が強い。さらに言うと痛い。
振り返って見た寮長さんは先程とは打って変わって、人懐こい笑みが消えて驚愕と困惑が浮かんでいる。
「オマエさ、昔__」
·
寮長さんが口を開いた瞬間、黒い影が舞い降りた。
「ここにいましたか、A君」
「が、学園長！？いま大事な話しようとしてたのに…」
「それは失敬、アルアジーム君。しかし私も重要な話でして」
突拍子もない登場はいつものことだが、今日はいつものおどけた様子はない。静かだ。仮面の奥に光る目が恐ろしい。
寮長さんには申し訳ないが、ただならぬ気配を感じて学園長に先に話してもらうことにした。
『それで、何の用ですかァ？』
僕は普段通りを装って問いかけるが、学園長は淡々と、感情が抜け落ちた様子で口を開いた。
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「Aさん、親御さんから貴方の退学要請が来ています」
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作者名：くろかは | 作成日時：2020年3月24日 15時
