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怪奇ってなに ページ48

空を飛ぶ手段は箒だけではない。



「どうだ!?絨毯の乗り心地は!!」

『めちゃくちゃ暴れてますねェ』



特にこの熱砂の国の国宝級魔法道具、"魔法の絨毯"を知らない者はいない。

そんなお宝に乗って振り落とされそうになっている理由は、数分前に遡る。



***



もう必要ないだろうとトレインセンセーによる読み書き講座は終了した。

そうすると途端に放課後の時間が有り余る。他は皆部活に入ってるけど、今から入部してもきっと馴染めないよなァ。

ぼや〜っと考えながら寮への帰路につくと、いきなり大声が鼓膜を刺激した。



「どいてそこのヤツ〜!!!」



振り向いた先には飛ぶ布とそれに乗る褐色肌の青年。大声はこの人のものか。

ひとり納得していると突然視界が真っ暗になり、気付けば仰向けに寝ていた。なるほど、衝突したらしい。

するとあの青年が心配そうに覗き込んできた。銀色の髪が陽を受けて眩しい。



「大丈夫か!?」

『元気ですよォ』

「ずいぶん反応が鈍いな。悩み事か?それならオレに相談してくれてもいいぜ!1人で悩むよりずっといい!」

『悩みとは違うかなァ』

「そうか?でも考え込むくらいなら、いっそ絨毯に乗って気分転換しようぜ!」

『それ絨毯だったんスねェ』



あれ、いつの間にそんな話に切り替わったんだ?知らないうちに彼のペースに巻き込まれている。

ハツラツとした雰囲気はケイトセンパイに似ているが、あの人ほどの落ち着きはないようだ。



「そうだ、オレはカリム・アルアジーム。スカラビアの寮長だぜ!」

『寮長…てことはセンパイかァ。ハジメマシテ、Aでェす』

「オマエサバナクローなのにひょろいんだな!」

『わァ突然の暴言』



満面の笑みで酷いことを言う。信じよう、悪意がないことを。それもそれでタチ悪いけど。



***



この不思議な流れのまま絨毯に乗せられたが、思い返してみると本当に意味がわからない。わかったことなんてスカラビアの寮長さんはとんでもない自由人だってことくらいだ。

その寮長さんによると絨毯はかなり自己主張が強く、何か不満があれば全力で暴れ回るらしい。この間もフリンジが解れてたことで暴走し死にかけたとか。



『で、今は何が不満なんスかねェ。僕が嫌いなのかァ?』

「うーん、初対面でそれは今までなかったし…何か武器でも持ってるとか?」

『まさかァ。マジカルペンくらいッスよォ』



このテンションだが、現在進行形で暴走する絨毯に乗っている。

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作者名:くろかは | 作成日時:2020年3月24日 15時

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