調査ってなに ページ29
「失礼しまーす」
「クローバー先輩、大丈夫ですか？」
「おう、眼鏡！シケたツラ拝みにきてやったんだゾ！」
『見舞うヤツの言葉じゃねェ』
下校途中、慌ただしく走ってくユウたちに声をかけたら「とりあえず来い」と問答無用で引っ張られてった。体力育成のおかげか走っても全然へばらなかった。素晴らしい。
当のトレイセンパイはベッドに座ってて、ベッドの脇には知らないハーツラビュル生。彼らは僕らに気付くとぱっと笑った。
「あれ、エーデュースコンビじゃん。それにグリちゃんにユウちゃん…あ、もしかしてAちゃん？」
ケイト・ダイヤモンドと名乗ったその人は3年生らしい。トレイセンパイとのファーストコンタクトで自分がそこそこ有名なのは知ったから「何で僕の名前を？」なんて聞くのはただの手間だ。
やったーやっと会えたー、なんて勝手に写真撮られたけど気にしない気にしない。
「で、トレイ先輩の怪我ってどんなカンジなんすか？」
「ああ、階段から足を踏み外したんだ」
やはりマジフトの主力選手だったようで、同情したらしいモップ(グリム)が好物のツナ缶を分けてあげていた。
体調不良ではないからか結構賑やかで、センパイ自身もそこまで深刻な顔ではない。見せないだけかも知れないけど。
そんな中ハーツラビュル寮長のリドルセンパイもやって来た。
グリムがいきなり"怒りんぼリドル"なんて呼ぶからこの上なく焦ったけど、どうやら入学当初起きたオーバーブロットの件にオンボロ寮の2人も関与してたらしく、ある程度は打ち解けているらしい。
リドルセンパイの"打ち解ける"の基準がわかんない
「トレイ、具合はどう？何か食べたいものや飲みたいものはある？」
「そんなに心配しなくても大丈夫だって言ってるだろ？」
「でも、その傷は僕のせいで…」
同級生ズがピクリと反応した。彼らもこの事故に疑問を抱いているようで、詳しく聞かせて欲しいと頼んでいる。
詰め寄られたリドルセンパイは目を伏せながら当時を語った。
「用事があって、昼休みに3年生の教室に行ったんだ。その時……階段から落ちかけたボクを庇ったばかりにトレイが怪我を……」
「俺が勝手にしくじっただけだから、もう気にするなって」
肩書き以上の関係がある2人だ。互いのモヤモヤがとても優しい感情なのは見て取れる。
皆が考え込む中、ケイトセンパイがニコッと笑った。
「ささ、もう怪我人はゆっくり休ませてあげよ。退散、退散〜」
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作者名：くろかは | 作成日時：2020年3月24日 15時
