サーカス団員は隙だらけ (ページ25)

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捕獲ってなにページ25

『エース、やっぱ帰ろう』

「いいけどイキナリだな？まだ回る気マンマンだったじゃん」

『いいよ。もう十分だ』

笑みを崩さず、覚られないように。

エースは不思議そうにしていたが、拘りすぎない性格が功を奏して「じゃ帰るか」と歩き出した。

仕事に愛なんて微塵もなかったが、幼い頃から見続けた顔ならば嫌でも覚えてしまう。遠目に見えたアイツは間違いなく常連客だ。

こんな綺麗な場所に、薄汚いヤツが2人も。

この人混みなら上手く紛れることができるだろう。多分向こうは僕に気付いてない。こっちから離れれば大丈夫なはず。

気付かれなければ。

荒くなる呼吸を、ドクドクと嫌な音をたてる心臓を、決して覚られてはいけない。

絶対に、絶対に、絶対に。

ヤツの背後に差し掛かった。このまま通り抜ければ、

·

手首を、掴まれた

強引に引っ張られる、

·

ヤツの姿は背後に、遠く小さくなっていった。

『エース』

「んな下向いてたら逸れんだろ？保険だよ保険！」

彼には気付かてしまったのだろうか。いや、本当にただ言った通りの考えだったのだろうか。

……どうでもいいか。

振り返りもせずズンズン進んでく背中が、すごく心強かった。