電波ってなに ページ21
「は？」
イグニハイド寮長、イデア・シュラウドは思わず身を固くした。
いつものように自室から校内を移動する自分代わりのタブレット端末を操作していると、中庭に差し掛かったときに不思議な生徒をとらえた。
他が友達と固まる中ひとりベンチに座り、ぼうっと虚空を見つめている。
それならば何も不思議ではないしイデア自身も特に興味は持たなかったが、重要なのはその生徒の行動だ。
《お前……とに…………つい……る……》
何か言っている。心做しか虚空のある一点を見つめているようにも見える。
ていうか今「お前」って言った？誰もいないところに向かって？？もしやこの年で厨二病拗らせてるパターンですか？？？僕には見えないものが見えている的なやつですか？？？？
見たとこ体育会系武闘派集団・サバナクロー寮の生徒みたいだけど、そんなとこにも拗らせ陰キャっているものなのか？だとしたら絶対肩身狭いでしょ、縄張り争いに負けて野宿とかありそう。
「うーわ拙者絶対に無理でござる嫌でござる〜…流石に同情いたしますぞ」
彼の部屋にはマル秘ノートが隠されていたりするのだろうか。たまに一人になったとき「真の力を見せてやろう」とか言いながら手袋とったりするのだろうか。人の目を盗んで前髪で目を隠したりするのだろうか。秘密裏に悪の組織と夜な夜な戦っているのだろうか。はたまたネット界隈では最強タイプなのだろうか。でもそれ自称するやつ大体イキってるだけで大したことないけどさ。
「まぁ…どの道僕には関係ないけど。」
「兄さーん！新しく搭載した機能、使いこなせてきたんだよ！」
ふと外から弟の声がして、部屋に入れてやろうと液晶画面から離れた。
ドアを開けると目線の下に無邪気に笑う弟が立っている。大きな目は今にも零れそうに見える。自分と同じ青い炎の髪に目元を和らげ、部屋の中に招いた。
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その間に"黒い人型の影"が映り込んでいたことを、目を離していたイデアは知らない。
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作者名：くろかは | 作成日時：2020年3月24日 15時
