My HERO (ページ7)

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「近いって、どれくらい？」
「んー…10分くらい？」
「…それ近くなくない？」
「そう？歩いてたら、あっという間だよ」

＿＿＿"夜はな、色んな景色みえるんやで？あ、真っ暗とか言わんといてな！？よーく、見てみ"

「……A？」
「…あ、あーごめん。大丈夫」

いけない、と頭を振って意識を引き戻す。
どうも炭酸に引きづられてるみたいだ。

大丈夫、気の所為だ。

「でも、確かに俺も夜の景色好きだな。ほら、星とか綺麗じゃん？…あと、色々忘れられるじゃん？」
「…いろいろ」
「そ。ほら、遅刻したーとか、単位落としたーとか、バイトで失敗したーとか、…失恋したーとか？」
「…確かに」
「てか、どこの大学なの？あ、俺はすぐ近くのなんだけど」
「あ、私も。そこの2年です」

ころっころと話が変わる人だなーと思いながら答えるとまさかの答え。えー…こんなイケメンいたら話題になりそうだけどなんで…？と思わず疑問。わたし自身そういう話題に疎い自信はあるが流石にこのレベルの話は嫌でも聞こえてきそうな話題だから。

なんなら学部まで一緒なのになんで気づかなかったんだろう、と疑問がさらに追加されると次の彼の言葉で納得した。

「俺ねー1年留年してんの。だから今年から一緒」
「あー…そういうこと。だから…」
「だから？」
「…紫耀くんレベルのイケメンの話を聞いた事なかったので。ほら、話題になるじゃん？」
「あー…まあ？」

否定はせずに苦笑いしている彼は自覚はあるんだろう。

納得したのはうちの大学で私の学部ではキャンパスが2年生から変わるからだ。そりゃさすがに別キャンパスのイケメンはいくらなんでもわかんない。

「というか、聞かないの？」
「え？何を？」
「え、なんで留年したか、みたいな」
「聞かれたいの？」

違うと思ったんだけど、と伝えると
ぱちぱち、くっきりぱっちりな目を瞬きさせる。

「別に留年なんてある事だし、事情があるにしても紫耀くんが話したいなーと思うなら聞くけどそうじゃないなら聞かないよ」
「…そっか」
「そ。人は誰しも秘密くらいあるもんだよ」

あ、ここ。私の家とちょうどキリのいいところで到着。
紫耀くんはしばらく言葉を探して、

そしてなぜか嬉しそうに笑った。

「じゃあ、また明日」
「うん、また明日？」

歩いていった方向が来た道をまた戻って行ったことは何も言わず、明日お礼を言おうと決めた。

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