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練習が終わったのは午後8時前。
7時には全体練習は終わったものの、今日はなんだかシュートがあまり良くなかったので自主練をしていたらそんな時間になっていた。
「…よし、今日はコンビニでいいや」
そう決めて家まで少しだけ遠回りの道を選択する。
たまには自分を甘やかしたっていいだろう。
夜の街は静かで、でもなんだか特別な気がして。
いつもは音楽を聴いて歩くのだけど勿体なくてこの時間は外の音を聴くことにしている。
コンビニが目の前、という所で突然背中を叩かれて
内心ビクビクしながら振り返るとまさかの出会い。
…良かった、音楽聴いてたら叫んじゃってた。
「…やっぱり！朝の子！伊月Aちゃん！」
「…あ、朝の。ひらのしょう、さん」
「おお！覚えててくれたんだ、嬉しい」
「それは、こちらも、です」
なんか堅くない？とケタケタ笑う彼は、コンビニの安っぽい光に照らされてても輝いていた。
「コンビニ行くの？てか、大学の帰りにしては遅くない？バイト？」
「あ、いえ。部活の帰りです」
「へー俺も買うもんあるから一緒に行こ」
「…目の前ですけどね」
「確かに！じゃあ一緒に買い物しよ！」
……いや、一緒に買い物って。
コンビニでそんなことある？と思いながらもついていく。
あ、そうだ。聞きたいこと忘れてた。
「あの、漢字どうやって書くんですか？」
「…漢字？」
「はい、名前の」
「あー…えっと、苗字は平坦な野原で、平野。名前は紫になんか難しい耀くで紫耀、えーっと、これ！」
結局スマホのメモでわざわざ打って見せてくれた平野くん。だったら最初から、とつい思ったが彼はきっと天然なんだろうとひとつ学ぶ。
「平野、紫耀」
「ふふ、そう。平野紫耀です」
紫に耀くと書いて紫耀。
「…綺麗な名前、ですね」
「ふふ、初めて言われた。ありがとう。伊月ちゃんの漢字は？」
「あ、えーっと、こう、です」
「おお！似合ってる！なんか！」
「なんかって」
思わず笑ってしまう。面白い人だ。
「改めて、よろしくね」
「はい。平野くん」
「堅苦しくない？長いし名前でいいよ。俺も名前で呼ぶから！ね？」
「…じゃあ、紫耀くん？」
「うん！A」
おお、呼び捨て…
慣れてるな、とは思ったけど不思議と嫌な気分にはならなかった。
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作者名：森のくま | 作成日時：2022年4月18日 13時
