EsとF (ページ5)

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「失礼しまーす」

「え？､､あっ佐野先輩！」

「ん？､なんでAちゃんここにおるん？」

正門先輩や大晴先輩たちと喋ってて忘れてた。

私、佐野先輩を呼びにきたんだった。

佐野先輩が部屋に入ってきて思い出した。

時間は、16時05分

「合奏が16時半からなので、呼びにきました」

「あ、なるほど。ありがと」

いつも通りの背の高さ。

そして、少し冷たいのもいつも通り。

今日も、佐野先輩は元気そう。

学校を休みがちな私が

週に4回は学校に来れてるのは、佐野先輩のおかげ。

私の心が、先程までの緊張がなくなって

穏やかになっていた。

「大晴くんごめん。これやっといてくれん？」

「おーええで。部活頑張ってなぁ」

「じゃあ行くよ」

「え、あっ､､」

大晴先輩と少し会話をしたと思ったら、急に私の手を握って引っ張った。

突然のことすぎて、返事がうまくできなくて

引っ張られるまま進んだ。

「し、失礼しましたっ！」

2人して生徒会室を出てからも、

佐野先輩は、私の手を握ったまま。

私は、そんな佐野先輩の半歩後ろを歩く。

「佐野せんぱいっ、あの､､手、！」

「このまま握られといて」

一向にこちら向かない佐野先輩。

ただ、ついて行くだけの私。

どれだけ追いかけても先を歩いてしまう。

こんなに、安心するのに。

こんなに大好きなのに。

私は、佐野晶哉という男に近づかない。

それが悔しくて、苦しい。