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探偵君達が大急ぎでスーパーから走っていくのを横目に、私はスーパーの入り口から少し離れた場所で彼が出てくるのを待った。
(シェリーを追いかけてるなら、すぐ出てくるはず……)
1分も満たない間に出て来た彼を見て私は走り出す。彼の正面15mくらい離れた場所を横一線に。猫の姿で。
すばるが秀一なら気付いてくれるかもしれない。そう信じて……。
駐車されている車から車までを、ダーッと駆け抜ける。私の体が車の影に隠れる瞬間――
「Aっ!!」
――嬉しかった。気付いてくれたことに、生きていてくれたことに……本当に嬉しかった。
ピタッと止まり彼の方へ体を向けて首を傾げる。私は
彼は一度首元に手を伸ばしたが、すぐその手を引っ込めた。その場でしゃがみ込んでチチチチッと舌を鳴らしながら、左手の人差し指を上下に動かす。
呼ばれてるのがわかり、前足を前に一歩踏み出してまた止まる。というか止めた。
(これ秀一の所に行って捕まったら、外出れなくなるんじゃない?)
外に出れなくなる→
(……これ駄目だ)
ピタッと止まった私に、彼は優しく微笑みながら“こっちにおいで”って言ってくる。
(くそぉ……!変装しててもイケメンめ!!)
どうしようか考えてて、まったく動こうとしない私に
「A、俺だ。……この姿だからわからないのか?」
と悲しそうな顔で言われたら
(その顔はずるいーー!!)
わかるよって駆け寄りたい!!胸に飛び込みたい!!撫でて欲しい!!抱っこして欲しい!!一緒に寝たい!!けど……!
(ごめんなさいーーー!!)
溢れそうになる欲望を抑え込んで、脱兎のごとく逃げ出した。後ろから「待て!」って言われたけど待てません!
――人気のないところで人間の姿に戻れば、頭を抱えて蹲る。
『罪悪感が半端ないぃぃ……』
罪悪感に苛まれていても秀一が生きていたことは嬉しくて、自然と頬が緩み笑顔になる。だけど涙も出てくる。
『どっちにしろ泣くんじゃん。私、泣き虫だなぁ……』
自分に呆れて苦笑を漏らすけど、心は晴れやかで。また頑張ろうってなる。……秀一にはとても申し訳ないけど。
久し振りに、手の込んだご飯でも作ろうかなと思いながら帰路につくことにした。
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雪丗(プロフ) - ベルモットさん» 本当のところ??ベルモットが感じ取った通り、彼女が思い描いたのは愛しい人の姿です。なので慈愛に満ちた目という表現は間違ってないかと思います。 (2019年6月19日 10時) (レス) id: a6201812ee (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - そうですか。解りました。夢主人公は慈愛とベルモットは言ってましたが、本当のところはどうですか? (2019年6月19日 0時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
雪丗(プロフ) - ベルモットさん» 夢主とジンの関係は仕事仲間です。肉体関係には至らないでしょう。夢主がジンと致す理由がありませんし、逆にジンが彼女を襲おうものなら返り討ちにあい、彼の人生はそこで終了という未来しか見えないので書けません。 (2019年6月17日 23時) (レス) id: 6ba5bde614 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - 夢小説読みました。夢主人公が黒の組織絡みで結構タイプでした。夢主人公とジンの関係や肉体関係も良かったら見たいです。 (2019年6月17日 17時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
雪丗(プロフ) - 柚月さん» コメントありがとうございます。これからどうなっていくのかはネタバレになるので言えませんが、続きを待っていてくださる読者様が楽しんで読んで頂けるよう、最善を尽くしていきたいと思います。 (2018年5月17日 0時) (レス) id: a6201812ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪丗 | 作成日時:2018年5月12日 18時