18. ページ19
入間達の姿が見えなくなるほど遠くまで行ってしまえば、フィリアは側に立つ教師に顔を向ける。
『お久し振りです、ダリ先生。兄がお世話になりました』
「いやいや!入学おめでとう、フィリアちゃん」
『ありがとうございます』
ダンダリオン・ダリ。
魔界歴史学担当で教師統括。柔軟で穏和な教師で生徒から人気。悪魔らしい攻撃的な一面も持ち合わせている。フィリアの兄の担任をしていた時期がある為、顔見知りだ。
ダリがフィリアを残したのは、久方ぶりに会った彼女と挨拶をするため。それと
「僕に聞きたいことがあるんじゃない?……と言ってもフィリアちゃんが聞きたいことなんて一つしかないだろうけど」
『さすがダリ先生です!本日、カルエゴ先生はどちらに?お姿が見当たらないのですが……』
「うーん……、昨日の件が相当ショックだったみたいでね。寝込んじゃったんだよ……」
『やはり……』
何となく察しが付いていたフィリア。心配気に眉を下げている。そんな彼女へ、一枚の紙を懐から取り出したダリは手渡した。
「はい!フィリアちゃんにプレゼント!」
『これは?』
「カルエゴ先生の住所!」
パァッ!と満面な笑顔で、想い人の住所を受け取ったフィリア。だが
『……ダリ先生。一応お聞きしますが……、一生徒に教職員の住所を教えて良いものなのですか?』
少しの理性が働き、仕舞うのを躊躇い問うてみた。その返答は「面白くなりそうだから良い!」と、フィリアと同じく満面な笑みを浮かべて親指を立てるダリ。悪魔的な考えである。
『では遠慮なく』
と直ぐに順応し、仕舞い仕舞いと大切に仕舞い込むフィリアも大概である。
『このご恩は、近々職員室へ手土産を持参致します』
「うん!楽しみにしてる!」
こうしてここに、一つの協定が成立したのだった。
ダリとの会話を終えたフィリアは、入間達を探して校舎を歩く。しばらく歩くと楽しそうな……たまに悲鳴の混じった知っている声が聞こえ、柱の影から覗いてみる。
『えぇ……?あれは確か……ガブガブ絵本、だったかな?』
本に鋭い牙が生え、開閉しながら追いかけてくる玩具だ。それに追い回されている入間とアスモデウス。
『……私は何も見ませんでした』
10人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雪丗(プロフ) - ちこりぃさん» ありがとうございます(^^)そう言って頂けますと、この作品も報われます(*^^*) (2021年7月20日 10時) (レス) id: fa8523d4cc (このIDを非表示/違反報告)
ちこりぃ - …いや普通におもろいですやん (2021年7月19日 23時) (レス) id: 8ef3002cf4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雪丗 | 作成日時:2020年8月6日 21時