継いで②【オリジナル】 (ページ17)

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ゼオンが私の教育係になって、そろそろ一年の月日が経つ。今現在、私の体に異変は見られない。まだ私の命は続くということなのだろう。

母様は日に日に衰弱していった。最初は軽い咳をするようになり、日増しに咳の回数が増え、夜も眠れなくなっていた様子。

膨(ふく)よかな体型では決してなかったけれど、細過ぎるという程でもなかった母様。程々に肉付いた柔らかな感触に包まれることが私はとても好きで、よく母様に抱き付きに行っていた。

〈Aは甘えん坊ね〉

と、口に手を当てて笑いながら言っていた母様のことを思い出す。……もう、母様の声は思い出せないけれど。

短い時間しか共に居られないことから厳しいところもあったけれど、それでも優しい人だった。時折見せる穏やかな笑顔も好きで。お役目を頑張って褒めて貰おうと、子供ながらに考えていたりもした。

そんな母様の食欲が少しずつ減ってしまい、顔色が悪くなり、頬が削げて窶(やつ)れ、寝た切りになってしまった。

移動することの出来なくなった母様。その体を濡らしたタオルで拭おうと、衣服を取り払った背中を見た時には息を飲んだ。肌が荒れ、肉がない薄い背中に浮き出る背骨や肋骨。

骨と皮だけというその姿を見るのは心苦しく、目に涙を浮かべながらも、溢しては駄目だと唇を噛み締めたものだ。

母様の声は忘れてしまっても、……その姿は子供ながらに衝撃を受けた。だからこそ、今でも鮮明に覚えている。

体は弱ってしまったが心だけは負けまいと、最後の最後まで気丈に振る舞っていた母様。そして立派な最後を迎えて……。