【ヒロアカ】竜胆【ホークス】 (ページ8)

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ep.8 ページ8

とある男の一室の壁に、一枚の写真が貼られている。

その写真に写っているのは女性で、明らかに視線が外れており、正面から撮られたものでは無い。

広い空間にたった一枚だけ貼られた写真は、違和感というのだろうか、異質性があるのだろうか、とにかく何かを感じるものだった。

その部屋に、部屋の主である男が入ってきた。

その男は、そう、鷹見啓悟だ。

その手には、二枚の写真が握られていた。

いずれの写真も、視線が外れている。

一枚は、マンションの玄関付近に植わっている花壇の植物に水をあげているところだろうか。

もう一枚は、ゴミステーションの掃除をしているところだろう。

その二枚の写真を鷹見は大切そうに眺め、元々貼ってあった一枚の写真の両隣に貼った。

鷹見は壁に貼った三枚の写真を愛おしそうに見て思う。

「まだ、足りない

Aさん...」

この光景を見たら、誰もが異常だと言うだろう。

プロヒーローであるホークスが一人の女性の、しかも盗撮と思われる写真を眺めては笑みを浮かべているのだから。

「Aさん、好きです。

もっと貴女こと知りたい

朝起きてから夜寝るまでの全部を知りたい

寝てからも、どんな夢を見ているのか毎日毎日教えて欲しい

いつも何食べてるのか、どこに出かけるのか、買い物はどこでしてるのか、

友達はどれくらいいるのか、付き合っている人がいるのか、＿＿＿＿婚約者がいるのか

全部全部全部、知りたい」

全て、誰にも聞こえていない。

呟きの対象であるAの管理しているマンションの一室で、その管理人に向けて放つ言葉は、そのまま部屋に溶けていった。

.

「いつか、この部屋を貴女でいっぱいにしますからね。

俺の愛しのAさん。」