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ep.29 ページ31
『鷹見さん……
私なら、役に立てるんですか……？』
｢俺は、Aさんじゃなきゃダメ。
一回、抱きついていい？｣
『あ、え……はい。』
少し警戒したAだが、予想とは逆にその抱擁は柔らかく優しいものだった。
｢あー。安心する。ずっといて？俺のとこに。｣
『……ぁ、えっ、と』
｢俺にはAさんが必要だから。｣
『……。』
Aの目はうつらうつらしている。
実際は眠気から来ているものなのだが、まるで鷹見に暗示でもかけられているように見える。
鷹見の問いかけに答えられぬまま、Aは眠りについた。
｢Aさん、寝ちゃったか。
寝顔も可愛いな。
それにしても相当動揺してた。
あそこまで寛容な人だとは思わなかったなー。
あと一息だよね。あと一息で、
完全に、堕ちる。｣
寝ているAの頬を撫でながら呟いた。
｢おやすみ。Aさん。
いい夢、見られるといいですね。
ぐっすりとAさんが寝ている間にも、俺はAさんのことをずっと考えてるよ。
また明日。｣
寝ているAに聞こえるはずがないまま、その言葉は消えていった。
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作者名：飛べぬひじき | 作成日時：2020年2月18日 20時
