傷跡 (ページ8)

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岸「はい、これ。今日はゆっくり休め」

帰って着替えてテーブルに座った私に

岸くんはお茶を出してくれた

岸「さっき言ってたことなんだけどさ…」

私の前に座って岸くんが話し始めた

岸「俺にはAの苦しみは、分かろうとしてもたぶん一生分からない」

そう言った岸くんの顔は

少し寂しそうで悲しそうに見えた

岸「でも海人なら分かると思う。海人の苦しみもAになら分かると思う」

「岸くん…」

岸くんにはちゃんと両親がいて

愛情を持って育てられて

でもここには両親がいなかったり

いても愛情を注がれなかった子がほとんど

きっと岸くんは

分かってあげたいのに分かってあげられない

そんなもどかしさを

ずっと抱えて私たちと一緒にいてくれたんだ

岸くんも岸くんなりに苦しんで

今ここにいる

岸「まぁ、何が言いたいかっていうと…もっと頼れ」

「えっ…」

岸「変に抱え込むな。Aの味方はAが思ってるよりたくさんいるから」

そう言うと岸くんは大きな手で

私の頭をぐしゃぐしゃ撫でた

「もう、ぐしゃぐしゃになったじゃん」

そう言うと笑いながらキッチンの方にいく背中に向かって

「ありがとう、岸くん」

と伝えると

「おう！」と眩しい笑顔を見せてくれた

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