傷跡 (ページ24)

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"…A"

誰かに名前を呼ばれてる気がして

ゆっくり目を開けると

目の前に海人の顔があった

海「おはよう」

「海人…」

海「なかなか起きてこないから起こしに来た」

私、あのまま寝ちゃったんだ

起きようとすると「A？」と海人に呼ばれた

海「もしかして昨日泣いた？」

「分かるの？」

海「ちょっと目腫れてるから…」

「ふふっ、凄いね。海人は」

ちょっと見ただけですぐ私のこと分かっちゃうんだもん

ほんと海人には敵わないや

海「何かあった？」

「えっと…」

海人に言っていいのかな

岸くんから聞いたこと…

海「ごめん、言いにくいこともあるよね…」

そう言って立ち上がった海人の顔が

すごく寂しそうで

言葉より先に体が動いて

海人の腕を掴んだ

「あのね、岸くんから聞いたの」

海「何を？」

「海人の昔のこと…」

私がそう言うと海人は「そっか」と呟いた

海「ごめんね。泣かせちゃって」

海人は何も悪くないのに

なんで謝るの？

なんでそんなに泣きそうな顔して笑うの…

「海人のせいじゃないよ」

海「A…」

「岸くんから話聞いて、海人になんて声かけようってずっと考えてた」

海人の過去を聞いて

どんな言葉をかけようか

どんなことが出来るか

ずっと考えてた

「でもやっぱり分かんなかった」

いくら考えてもかける言葉は見つからなかった

「だけどね、私の中でひとつだけはっきりしてることがあって」

なんて声をかけようとか

どう接しようとか

そんなのがどうでもよくなるくらい

「好き…」

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