傷跡 (ページ23)

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岸くんが話し終わって

しばらく経つのに

出てくるのは涙ばかりだった

海人にそんな過去があったなんて

知らなかった

私よりずっと辛い思いしてるのに

いつも明るく笑ってて優しくて

ちゃんと生きてる

「岸くんっ…わたし…」

岸「なんて声かければいいか分からないとか思ってる？」

「なんで…」

岸「何年Aのこと見てきたと思ってんだよ」

そう言うと岸くんは私の頭を撫でた

岸「まぁ、分かんねーよな。俺も分かんなかった」

「でもな」と岸くんは真っ直ぐ私の目を見て

岸「ただそばにいてやるだけで、それだけでいいんじゃねーかな」

「えっ…」

岸「俺はAにならそれが出来ると思う。Aに海人のそばにいて欲しいんだ」

私でいいの？

私なんかが海人のそばにいていいのかな…

岸「Aがいいんだよ。Aじゃなきゃダメなんだ」

私の気持ちを見透かしたようなことを言って

優しく微笑む岸くん

「分かった。ずっと海人のそばにいる」

岸「おう。海人もその方が嬉しいだろ」

「そうかな？」

岸「うん。ほら、目冷やさないと明日も学校だろ？」

そう言って冷凍庫から保冷剤を持ってきてくれる

「ふふっ、久しぶりにこんなに泣いた」

岸「来たばっかりの時なんか毎日泣いてたくせに」

「うるさいな～。まだ子供だったんだからしょうがないでしょ」

岸「俺から見たらまだまだ子供だけどな」

岸くんとくだらない言い合いもできるようになったところで

「子供はもう寝なさい」って言われて

自分の部屋に帰された

部屋に戻ってベッドの上に寝転がる

天井を見ながら

岸くんから聞いたことを思い出していた

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