傷跡 (ページ16)

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「なんで来たの…」

海「Aが変なこと考えてそうで怖かったから」

「もう嫌だ…疲れたの」

私がそう言うと

海人は離れて私を見た

海「トラウマとか罪悪感なんて消えるわけない。一生抱えて生きていかなきゃいけないんだよ」

「海人は辛くないの？」

海「辛いよ。あの時のことなんて一生忘れることない。でも生きていかなきゃいけないんだよ俺たちは。だってあの時生かされたんだから」

「生かされた？」

海「俺もAも死んでもおかしくなかった。でも今こうやって生きてる」

死んでもおかしくなかった…

確かにそうだ

お母さんもお父さんも死んじゃって

でも私だけ生きていた

それが苦しくて仕方なかった

海「だから俺たちはどんなに辛くても苦しくても、自分から命を投げ出すなんてことしちゃいけないんだよ」

海人の言葉がどんどん私の心を溶かしていく

海「帰ろう、A」

海人の言葉に気づいたら頷いていた

あの時海人がいなかったら

きっと私は生きていなかった

廉「そっか…なんか悔しいけど、かっこええな海人」

「でしょ」

この話誰にもしたことなかったから

海人のことかっこいいって言ってもらえて

すごく嬉しかった

「あっ、じゃあこの傘貸してあげる」

廉「ええの？」

「ええの？って傘ないんだからしょうがないじゃん」

廉「ありがとう、じゃあ明日返すわ」

そう言って施設の前で別れて

走って中まで入る

海「A、おかえり」

「ただいま」

海「傘は？」

「廉が忘れたから入れてって言ってきて一緒に帰ったの。傘は廉に貸した」

私がそう言うといつもなら何か言ってくるのに

急に大人しくなるから

「海人？」と聞くと

「えっ、あっ、なんでもない」とはぐらかされた