オレンジの世界。

ノート貸して6 ページ28

『わたしに会えば

挨拶してくれるもん

それで今日も頑張ろうって思えるの』

「……俺にそんなパワーないよ？」

ん？って思って聞き返す

『あるよ？

横尾くんだもん』

「…それってどういう意味？」

挨拶したら元気になる、じゃなくて。

俺だと…？

(人2)さんはいつものようにまた

詰まってどもって。

でも聞きたい…

「落ち着いて、話して？」

『〜っ、い、言えない…』

困ったように眉下げるから

これ以上は聞かないけど

「いつか言ってくれる？」

『……わからない』

「…そっか」

きっと勢いで言ってしまったんだろう

………

それから数日後。

またテスト期間がやってきた

「(人2)さん、ごめん。ノート貸してくれる？」

俺の声にびくっと肩があがると

震えた手で両手で持って

ノート差し出してくる

なにか決意したような表情

「…ありがと」

授業間の休み時間

太輔は職員室に用があるみたい

ん？ノートになにか…

『横尾くんへ』

手紙…？

綺麗な夕焼け色の便箋

開けると、ノートと同じ字

『横尾くんへ

……………

あぁ、どうしよう。

お手紙で気持ち伝えようと思ったのに

一週間前に震える手で宛名を書いたきり

進まないシャーペン

とりあえずは前聞かれた

質問の答え…

どんな言葉で伝えていいのかわからない

検索の履歴は

ラブレター 書き方

気持ちの伝え方

ばかりで

はぁ……そろそろテスト期間だから

勉強しなきゃいけないのに

どっちも手付かずで

学校でも横尾くんを

盗み見すると苦しいくらいに

でてくるのは

好きだけで

「素直に書けばいいのかなぁ…」

『…なにを書くの？』

「？！…っ藤ヶ谷くん」

独り言のつもりが聞こえてた

横尾くんは…いない、か

「えっと…ある人にある気持ちを

伝えたいんだけど…

どうしたらいいのか分からなくて

同じ気持ちしか出てこないんだけど

そのまま素直に書いたら

ちゃんと伝わらない気がして」

『…ふーん。いいんじゃない？そのまま

素直に書けば。いちばん思ってること

伝えたら相手にもちゃんと素直に伝わるよ』

「そうかな？」

『うん、きっと伝わる。それで答えてくれる

頑張って、(人2)さん』

「…うん！ありがとう！」

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