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有岡の家でシャワー中の彼女のスマホに、通知が1件届いた。画面を見て口角が上がる有岡。送り主は、自身の想い人の伊野尾だった。当たり前のようにパスワードのロックを解いてメッセージを確認する。
話したいことがあるからもう一度会ってくれないか、という内容。有岡は彼女のフリをして返信をした。
『私も会いたい
明日の19時、〇〇公園で待ってる』
____待ち合わせの日時、伊野尾の前に現れたのは有岡だった。
「どうも。あいつの彼氏の有岡です」
「え、彼氏…?」
「はい。貴方と別れてからすぐ、付き合うことになって」
「…そう、だったんだ…」
"…あー…やばいな……やっと、やっとまた話せた……嬉しすぎてどうにかなりそう…"
驚きを隠せない伊野尾の姿に胸が高鳴りながらも、有岡は淡々と会話を続けた。
「それで聞きたいんですけど。
…今更元カノに連絡してくるなんて、どういうつもり?」
急に声のトーンが下がった有岡にうろたえながらも、伊野尾は続けた。
「俺は、ただ…後悔してて。もう一度会って、あいつと話がしたいんだ」
"…やっぱり、まだあの子のこと好きじゃなくなったわけじゃないんだな"
有岡は唇をきつく噛み締めた。
「…わかった。いいよ、会っても」
「え、ほんとに…?」
唐突な言葉に安堵する伊野尾。
その顔を見て、有岡は一瞬眉をひそめた。
「…俺の言うこと聞いてくれるなら、ね?」
満面の笑みでそう言い放った有岡。確かに笑っているのに、瞳の奥は笑っていない、そんな笑顔。
胸騒ぎがした伊野尾だったが、今はただ頷くしかなかった。
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作者名:むにこめ | 作成日時:2022年11月28日 22時