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数ヶ月後____
"…あ、あの子伊野尾くんのこと見てる"
ある日の大学帰り。
一緒に有岡の家へと向かっていたが、伊野尾が買いたいものがあると言うのでコンビニへ立ち寄っていた二人。
お菓子コーナーで真剣に悩む伊野尾への熱い視線を感じ、有岡が目線を移すとそこには同い年くらいの女性が1人。
"そうだよな〜…伊野尾くん綺麗な顔立ちしてるもんなあ。
俺も一目惚れしちゃったくらいだし"
いっそ物理的に見えなくさせてしまえばいいのかと伊野尾の前に立つも、有岡の身長では伊野尾の顔は隠せない。
"…あー、俺の身長じゃ隠せないの悔し……ってかまだ見てんのかよ…"
「ちょっと」
「え?うわっ」
"近…!"
いつもより数段低い伊野尾の声に振り向くと、至近距離でその綺麗な顔が自分を見つめていたので驚く有岡。しかし、その表情は穏やかなものではなかった。
「…今女の子見てた?」
「…え、あ、まあ…?」
「…ばか」
「え?…あーーちょっとまって、違う違う!」
待って、と必死に手を伸ばすも、スタスタと早足で出口へ向かう伊野尾に惜しくも届かない。
"なんで??さっきまで楽しく会話してたじゃん!
…なんで、こうなるんだよ…!"
伊野尾に対するとてつもなく膨大な気持ちが伝わっていないのが悔しくて、有岡は拳を握り締め、衝動的に想いを声に出してしまっていた。
「っ、俺はずっと、伊野尾くんだけだってば!!」
「…!!?ちょ、声でかいっ!」
「あ」
気づけば店内の客の殆どが二人に注目していて、先程伊野尾を見ていた女性も複雑な表情を浮かべその場を去っていった。
その姿を見て、有岡は小さく安堵する。
「…とりあえず、出よっか…」
顔を真っ赤に染めて、伊野尾はそう呟いた。
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作者名:むにこめ | 作成日時:2022年11月28日 22時