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「どうしたの?やけに大人しいじゃん」
あの後、いつものホテルへ来た二人。
伊野尾の服を脱がせ、身体をまさぐり始めた有岡だったが、伊野尾の様子がおかしいことに気づく。
「もしかして怖くなった?
…大丈夫だよ、痛いことはしないか、ら…」
両手で顔を隠し、小さく声を漏らしながら伊野尾は泣いていた。その姿を見て、有岡は目を大きく開き、言葉を詰まらせる。
「な、に…なんで、泣くの…」
「ぅ…」
伊野尾はこの状況が怖くて泣いた訳ではない。
元カノと上手く話せなくて悔しいからでもない。
「っ…おかしいよ……おれっ…」
"あいつのことが好きだった筈なのに、あいつのためにこんなことしてた筈なのに…
…なんで、身体だけでなく、心までも、
こんなにも有岡くんを求めてしまうんだろう……"
「……やめた」
「…ぇ…?」
「もう、おしまいにしよ」
有岡はベッドから降りて自身の鞄からスマホを取り出し、伊野尾の前に突き出して見せた。
そこには、有岡が最初に撮った伊野尾の写真が映っていた。元はと言えば、この写真を使って脅されていた伊野尾。有岡は躊躇なく削除ボタンを押した。
「今までごめんね。
…でも、これでもうおしまい!」
「…ありおか、くん…?」
笑顔でそう言うと、上着を着て鞄を持ち、ドアへと背を向け歩き始める有岡。思いがけない出来事に声が出せず、ベッドの上でただその行動を見つめることしかできない伊野尾。
「ばいばいっ」
「…ぁ、有岡く、」
バタンッ..
伊野尾が掛ける声も虚しく、有岡は部屋を出ていった。
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作者名:むにこめ | 作成日時:2022年11月28日 22時