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それから数日経ったある日。
伊野尾は、授業終わりに有岡と一緒に帰る約束をしていた。
"遅くなっちゃった…有岡くん、もう着いてるかな"
伊野尾は待ち合わせ場所に急ぎ廊下を小走りしていると、角から歩いてきた人と衝突してしまう。
「いっ…ごめんなさ……っあ、」
「…慧くん…」
幸か不幸か、そこにはずっと直接話したかった元カノの姿があった。
「…えっと……久しぶり…」
「…うん」
二人の間に沈黙が流れる。
"…急すぎて話したいことが何も出てこない…
俺、この子になんて伝えたかったんだっけ…"
「あの、さ……元気?」
「…うん、元気だよ」
「…そっか」
やっとの思いで出てきたのは在り来りのない、すぐに会話が終わってしまう一言。居心地の悪い空気感の中、こんな時にも伊野尾の頭に浮かぶのは、有岡のことだった。
「…あ、そう言えばさ!新しい彼氏できたんだって?どう?仲良くやってる?」
"…まあ、俺がその彼氏と仲良くしちゃってるわけだけど…"
この会話は何も生まれない。そんなの分かってる。ただ、自分と一緒にいない時、彼女といる時の有岡のことを何故か知りたいと思った。
「…うん、仲良いよ。優しいし…私のこと、大切にしてくれてるって分かるし」
「…はは…そう、なんだ…」
"…ふーん…。
俺にはあんなことばっかしておいて、彼女のことはちゃんと大切にしてるんだ。…そうだよね。彼女だもん。
…俺は、ただの……"
____かわいい
今は思い出したくもない、有岡の軽はずみな言葉。
"…ほんと最低。
思わせぶりな態度とってんじゃねぇよ…"
ズキンッ..
"……あれ、俺……今どっちに嫉妬した……?"
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作者名:むにこめ | 作成日時:2022年11月28日 22時