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八頁 ページ9

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…彼の悲しい顔なんて、もう見たくない。


有「…俺、行くわっ…!」


勢いよく席を立ち、全力で廊下を走って彼らを探した。

するとたまたま廊下を通りかかった友達に、ある情報をもらった。


「男好きの先輩に、大人しそうな可愛い男子が、無理矢理 屋上の方へ連れて行かれた」と。


…屋上は立ち入り禁止だから、多分伊野ちゃん達は屋上へ続く階段の踊り場にいる。

そう判断した俺は、急いで屋上へ向かった。



…伊野ちゃん、なんであんなに悲しそうな顔をしていたの?

出会ってたった数日しか経ってないけど、俺には分かるよ。

伊野ちゃんは優しい人で、俺に迷惑がかからないように何も言わなかったんだって。

俺には、分かるから…


素っ気ない態度の裏に隠された、君の優しさが__


…お願いだから、無事でいて…。



屋上への階段を駆け上がり、その踊り場には衝撃的な光景があった。


伊野ちゃんを壁に押さえつけ、キスをしながら彼の胸をいやらしく触って楽しむ先輩の姿。

伊野ちゃんの目からは涙が流れていた。


その姿を見て、一瞬にして怒りが込み上げてきた。


有「っ…てめぇ!!伊野ちゃんに何してんだっ!!」

伊「…えっ…?」


先輩は俺の大声にびびったのか、俺を交わしてさっさと逃げてしまった。

…あいつを追いかけるよりまず…


有「伊野ちゃんっ…!!大丈夫!?」


壁にもたれかかったまま膝から崩れ落ちて、肩で息をする伊野ちゃんに駆け寄る。

右手を両手で握ってあげると、彼も弱々しく握り返してくれた。


伊「…有岡、くん…なんでっ…」


有「…伊野ちゃんが、毎日泣いてたから…心配だったんだ…」


伊野ちゃんは大きく目を見開いた。


伊「…なんで、なんで俺なんか…」


…"なんで"なんて、理由なんか一つしかない。


有「…伊野ちゃんの悲しい顔、見たくなかったんだ。

泣きそうになってる顔見てると…なんでか分かんないけど俺まで辛くて。

…伊野ちゃんのこと、助けたかった。」


恥ずかしながらもそう伝えると、伊野ちゃんの目から大粒の涙が零れ落ちた。


…その後伊野ちゃんはしばらく泣き続けた。

俺は、ただ彼の手を握ってあげることしかできなかった。

怖かったよね、早く気づいてあげられなくてごめんって、何故かとてつもない罪悪感に襲われた。


__数分後、やっと涙が止まり少し落ち着いた伊野ちゃんが口を開いた。


伊「…有岡くん、」


有「ん?」


伊「…助けてくれて…ありがとう。」


…そう言った伊野ちゃんは、俺がずっと見たかった、とても優しい笑顔をしていた。





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むにこめ(プロフ) - mapiiさん» コメントありがとうございます!面白いなんて、嬉しいです…!もっと楽しんで頂けるように頑張りますね^^* (2017年4月15日 0時) (レス) id: f1d41cd502 (このIDを非表示/違反報告)
mapii(プロフ) - すごく面白いです……!彼女さん……どんまいだ。有岡くんの嘘と、伊野尾くんの秘密がこれからどうなっていくのか、とても楽しみです。続き楽しみにしてます!頑張ってください! (2017年4月13日 18時) (レス) id: b71e8cca2b (このIDを非表示/違反報告)
むにこめ(プロフ) - 明 日 音。さん» コメントありがとうございます!そう言って頂けて嬉しいです(´;ω;`)頑張ります! (2017年4月6日 23時) (レス) id: f1d41cd502 (このIDを非表示/違反報告)
明 日 音。(プロフ) - むにこめさんのありいの大好きです!続き応援してます♪ (2017年4月6日 21時) (レス) id: 622c57b769 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:むにこめ | 作成日時:2017年3月24日 23時

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