僕の嘘と、君の秘密。一章 ( ar × in )

二十二頁 ページ23

.




その日の夜、俺は決心した。


＿＿唯と別れる、って。


…思えば、唯に告白されて、こんな可愛い子だったら幸せになれそう！って単純な理由で付き合い始めた。

唯は美人で優しいし、勉強も教えてくれて、俺にはもったいないくらいの彼女だった。


…でも、やっと気づいたんだ。


俺は、いつも優しかった彼女を手放す行為が怖かっただけだって。

何より、山田や知念も応援してくれていたから、余計に"別れちゃダメだ"って気持ちが大きくて。


…俺はただ、可愛い彼女がいることで、心の隙間を埋めたかっただけなのかもしれない。


最低だってことは分かってる。

でも、心から｢好き｣だと言えなくて、ただ付き合っているだけじゃ彼女を困らせるだけだ。


それに……


＿＿今は、伊野ちゃんのことだけ見たい。


同性に告白なんて凄く怖かったはずなのに、勇気を出して真っ直ぐ気持ちを伝えてくれた彼に、ものすごく心を掴まれた気がしたから。

彼に対するこの思いを、早く知りたい。


…そう、思ったから。



ベットの上に寝転んで、スマホの連絡先の画面から｢唯｣の文字を探す。


有『明日の文化祭の後、教室に来て。話がある。それと、今年は一緒に回れない。』


一時間後に返信がきた。

画面には、｢わかった｣と一言。


いつもなら即返信がくるし、絵文字をたくさん使うのに今は何もないことに不安になったが、今日はそのまま寝落ちした。




.

二十三頁→←二十一頁

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す