｢ 有 岡 ｣の名字を貰って下さい。( ar × in )

二人への朗報 ページ2

ar side .




有｢伊野ちゃん！！聞いて聞いて！｣


毎日寝坊して遅刻しそうになるくらいギリギリの電車でこの職場に来る俺も、今日は違った。


隣の部署の、同い年。

中性的な顔をした、仲の良い友達の伊野ちゃんに一番に話しかける。


伊｢ほぁ？あ、大ちゃんおはよ〜。今日早いねぇ｣

有｢おはよ！あのね、聞いてよ！
日本でも同性同士の結婚が認められたんだって！！｣

伊｢…うん？｣


今朝のニュースで知った速報。

頭の上にはてなが浮かんだような、伊野ちゃんの不思議そうな顔を見てハッとした。

こんなこと言ったら…


伊｢ふふっ、なになに、大ちゃんって"そっち"なの〜？｣


ほら、やっぱり。
馬鹿にされた。

こんなこと言ったら、俺が伊野ちゃんのこと好きって言ってるようなものじゃん…！

…でも、鈍感な伊野ちゃんはそんなこと全く勘づいていないようだ。
少しほっとして、でもやっぱり悲しかったり。

複雑な気持ちになるのも、もう慣れた。


…君は当然、俺の気持ちにも気づいてない。




二年前、何社もの面接に落ちた俺がやっと受かったこの会社の仕事で失敗ばかりしていた頃。
俺のミスを伊野ちゃんが庇ってくれて、代わりに俺の上司からめちゃくちゃ怒られてた。

後で必死に謝ると、｢大丈夫だよ、気にしないで！｣って笑ってくれた。
その笑顔と優しさに、惚れたんだ。




伊野ちゃんは、ノンケだと思う。

｢田中さんの胸おっきいよねぇ｣なんてヘラヘラして言うし、女性社員に｢可愛いですねぇ｣なんて平気な顔して話しかけるし。


…でも、そんな君に恋をしたんだ。

ノンケで、学生の頃は彼女だっていた俺が魅了されるくらい綺麗で温かい君に。

今更諦めるなんて、絶対しない。


…それに、今日は俺的ビッグニュースだってあったしね。



伊｢大ちゃん、もうそっちの部長来ちゃうよ？｣

有｢あっ、やべっ！｣

伊｢ははっ、大ちゃんてば髪ボサボサ〜！
ちょっと待って｣

有｢へっ！？どこ？｣

伊｢後ろぉ〜｣


俺の髪を、伊野ちゃんの細い手で撫でる。

やばい…気持ちいい…

…ってしっかりしろ有岡大貴！！
ここは会社だぞ…！


伊｢はい、いつものかっこいい大ちゃんに戻った！｣


胸が撃ち抜かれるような最大級の可愛い笑顔。


…絶対、君の全てを手に入れてみせる。

そう、誓った。




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