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それはそれは甘い記憶
甘くて遠い記憶
「なぁ！なまえなんていうん？」
「…A」
「ふーん。おれ、す ばる！」
「す…ば？」
「すーばーるーー！！」
「す ばぶくん。」
「なんやねんそれ！！
もう！じゃあそれでいいわ！
ちゃんとついてこいよな！！！」
ーーーーーーーーーーーー
ピピピピ…
なに。あの夢。懐かしすぎ…。
「ばるくん！起きて！時間だよ。」
「もぉちょっと〜。
てかA、うるさいぃぃ…」
「もう！ばるくん！！！」
毎日のことながら
朝から体力消費がハンパない。
となりの家の
「ばるくん」こと、渋谷す ばるくんは
寝るときだけ、わたしの部屋に来ます。
わたしたちが小さかった頃、
ばるくんのご両親が夜にお勤めしていたから
必然的にばるくんは夜は我が家で過ごすことになり
わたしが高校生に、ばるくんが社会人になった今でもその習慣が残っているようで、朝は毎日こんな感じ。
「あぁ〜めっちゃ寝たわぁ…。
A、お水ちょーだい。
あと、灰皿も。」
「もー！ばるくん、煙草やめなよー！
そしてわたしの部屋で吸わないで！！」
うぃー！と言いながら背伸びをして
ベランダへ行くばるくん。
「おー。もう通学してるやつらおるでー。
A間に合うんかー？」
ベランダで煙草をふかしながら
わたしと同じ制服の子たちを見つけて
少しダルそうにそう言ったばるくんは
ぷか〜っと煙をはいた。
「間に合うかもしれないし、
間に合わないかもしれない！！
ていうか、間に合わない！」
「Aー！早くしなさーい！」
必死で準備してんのに、
部屋の外から響くママの声に
さらに焦り涙目になるわたし。
「ちょ、お前、なに泣いてんねん！笑
いつまで経ってもあの頃のままやな。笑」
煙草を消して戻ってきたばるくんが
わたしの顔を見て笑った。
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作者名：あいち | 作成日時：2016年4月17日 23時
