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「れ、煉獄さん…私の事、見てない、よね?」
己より背の低いしのぶの後ろにどうにか隠れ、Aはそう確認した。すると問われた青年、煉獄杏寿郎は笑顔のままに頷く。
「Aの可憐な姿はしかとこの目に焼き付けているぞ!」
「あああああああああ!」
Aはその答えに耐え切れず叫び声を上げ、しのぶは双方の予想通りの反応に耳を塞ぎながら目を閉じた。「目を開けたら夢が覚めたりしませんかね?」と思いながら。人はこれを現実逃避とも言う。
「煉獄さんもおかしくなっちゃったよ!」
「これはかなーり、雲行きが…」
「し、しのぶちゃん!私の傍を離れないで!」
羽織に縋ってくるAに、まるで妹に接するような可愛さを覚え、しのぶは思わず頬をほころばせる。その様子を見ていた、Aに惹かれてしまっている三人は面白くない表情を浮かべた。
「むむ。友人と仲が良いことだが……」
「俺が守ってやるっていうのによォ……」
「私は頼ってくれないのか……」
同時に呟かれたそれに、三人はお互い顔を見合わせた。
「二人共!Aは俺が守るから心配はない!」
「何言ってんだ、煉獄よおォ。あいつは俺が」
「いいや、私が」
終わらぬ堂々巡りが始まろうとした時、煉獄が大きな爆弾を落とす。それは本人の声の質によってか、大きく部屋に響いた。
「いいや、Aは俺の婚約者なのだから、俺が守るのは当然だ!」
「は?」
悲鳴嶼、不死川、そしてしのぶの声が重なる。当事者であるAはその発言に声すら出せぬほど驚き、ようやく声を絞り出して全力で否定し始める。
「いやいやいやいやいやいや!?!?初耳なんですが!?私と!?煉獄さんが!?なんで!?」
「恥ずかしがらずともいいぞ!A!あの日あの場所で誓ったではないか!」
「こっっっわ!過去まで捏造されてるの!?」
Aは勢いで体を乗り出そうとするが、それはしのぶによって押し止められた。制止したままに、しのぶはつとめて冷静な声で煉獄に語りかける。
「Aさんはこう言ってますが?」
「Aは恥ずかしがっているだけだ!胡蝶もその質を知っているだろう?」
残念ながらしのぶが知っているAならば、好きあった人と婚約を交わしたなら、こちらが鬱陶しいと思うほど、何度も何度も報告してくるだろう。Aは色々と開けっぴろげなのだ。
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もみじ - めちゃめちゃ面白かったです!! (2022年8月1日 19時) (レス) @page30 id: 32f65dbc25 (このIDを非表示/違反報告)
ハッシュタグ(プロフ) - ななしさん» お読みいただきありがとうございます。今でも反応をいただいており、私としてもお気に入りの作品ですので、そう言っていただけて嬉しい限りです。もしまた機会があれば、読んでいただけましたら幸いです。 (2022年4月9日 0時) (レス) id: bcf3124c84 (このIDを非表示/違反報告)
ななし - 面白くて一気読みしました!語彙力が凄くて羨ましいです...!シチュエーションも神でした!これからも応援しています!! (2022年4月2日 17時) (レス) id: 05cc864757 (このIDを非表示/違反報告)
ハッシュタグ(プロフ) - 水城舞梨亜さん» 喜んでいただけて良かったです!リクエスト本当にありがとうございました…! (2020年10月22日 11時) (レス) id: bcf3124c84 (このIDを非表示/違反報告)
水城舞梨亜(プロフ) - いいいい伊黒さんかっこいい!!!です!\(^o^)/伊黒さんは、私の推しなんですが、こんなにかっこよく書いていただけて嬉しいです!!(*´ω`*)後、夢主ちゃんがかわそう…でもなんかすごいです!(語彙力)感情が無いようであって。凄く、本人にあってると思います! (2020年10月22日 8時) (レス) id: 0e4689ecab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハッシュタグ | 作成日時:2019年11月30日 19時