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そうしていると、部屋の扉が開いた。今度は静かに開けられ、姿を現した人も口数が少ない人だった。


「あら、悲鳴嶼さん」

「こんにちは、悲鳴嶼さん!」


岩のように大きなその人は、俵のように風柱の不死川を担いでいた。それにしのぶ は「また怪我あるのに病室から逃げ出したんですね」と、棘のある言葉をかけてため息をついた。


不死川は不服そうに顔をしかめ、悲鳴嶼の腕から出ようと奮起するが敵わない。


「おい!悲鳴嶼さん!離せや!」

「静かにしろ、傷に触る」

「不死川さんは懲りないなあ」


思わず苦笑を漏らしたAに、不死川は目線をよこす。そして、一瞬その動きを止めた。その様子に不審に思った悲鳴嶼も同じように視界の下の方にいるAの姿を目にとめた。


「え、な、何ですか?二人して…」

「A…お前どうしたァ?怪我でもしたのかァ?」


突然で優しい言葉をかけられてAは困惑する。怪我をしても分かりづらい心配をされたことはあったが、ここまで真っ直ぐに懸念されたのは初めてだったからだ。


「いや、違うけど…」

「そりゃあ良かった」


悲鳴嶼の手を逃れ、目の前まで来た不死川に手を取られ、Aは更に混乱する。


「え、何でそんなに嬉しそうにするんです?」

「…好いている奴を心配すんのはおかしいかァ?」


その答えに、更に困惑の渦に突き落とされる。しのぶも驚き、笑顔のまま固まるが、Aはどこかで既視感を抱いていた。


(冨岡さんと同じじゃない?)


優しい手つきで、まるで割れ物に触れるように手を撫でられ、Aは頬を紅潮させる。不死川はその反応に気を良くしたように、更に距離を詰めた。


「不死川さんんん??」

「下の名前で呼べよォ、A」


また気を失わせるかと、Aが拳を握った時、悲鳴嶼がまるで猫を摘むように、不死川の体を宙に浮かした。


「なっ!」

「悲鳴嶼さん!」


安心しきった声を上げて、Aは悲鳴嶼の方へ歩み寄る。すると、悲鳴嶼は左手は不死川を捕まえたまま、右手でAを抱き寄せた。


「はい!?」

「A…傍に居てくれ」


低い声でそう囁かれ、Aは再び頬を染める。その様子にしのぶは飛ばしていた意識を取り戻し、事態の深刻さを悟ったのであった。

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もみじ - めちゃめちゃ面白かったです!! (2022年8月1日 19時) (レス) @page30 id: 32f65dbc25 (このIDを非表示/違反報告)
ハッシュタグ(プロフ) - ななしさん» お読みいただきありがとうございます。今でも反応をいただいており、私としてもお気に入りの作品ですので、そう言っていただけて嬉しい限りです。もしまた機会があれば、読んでいただけましたら幸いです。 (2022年4月9日 0時) (レス) id: bcf3124c84 (このIDを非表示/違反報告)
ななし - 面白くて一気読みしました!語彙力が凄くて羨ましいです...!シチュエーションも神でした!これからも応援しています!! (2022年4月2日 17時) (レス) id: 05cc864757 (このIDを非表示/違反報告)
ハッシュタグ(プロフ) - 水城舞梨亜さん» 喜んでいただけて良かったです!リクエスト本当にありがとうございました…! (2020年10月22日 11時) (レス) id: bcf3124c84 (このIDを非表示/違反報告)
水城舞梨亜(プロフ) - いいいい伊黒さんかっこいい!!!です!\(^o^)/伊黒さんは、私の推しなんですが、こんなにかっこよく書いていただけて嬉しいです!!(*´ω`*)後、夢主ちゃんがかわそう…でもなんかすごいです!(語彙力)感情が無いようであって。凄く、本人にあってると思います! (2020年10月22日 8時) (レス) id: 0e4689ecab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ハッシュタグ | 作成日時:2019年11月30日 19時

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