14 ページ16
「俺のこの気持ちが嘘だっていうの?」
「…ごめんなさい」
「僕は今こんなに君に心乱されているのに?」
Aは必死に腕をよじるが、それ以上の力を持ってして時透はその行動を制限する。鍛えられている上、血鬼術により枷が外されており、年上とはいえ平均より少し上程度の強さの力しか有しないAには振りほどけない。
「行かないでよ、傍に居てよ」
嘆願するようなその言葉に、Aは一瞬力を緩めてしまう。途端、時透はAの体を荒っぽく壁に押し付けた。
「俺のことを見てよ、ねえ」
「時、透くん!」
「何で目を逸らすの?」
迫ってくる時透の体に息苦しさすら感じながらも、Aは必死に目を合わせないように心がける。既に血鬼術にかかってしまっているので、何の意味も無いかもしれないが、罪悪感がAにそうさせた。
「…僕じゃだめなの?」
「えっ…」
「年下だから?頼りない?」
そんなことは無い。Aにとって時透は年下だが、同じ柱として尊敬し、頼りにしている。それだけは否定しなくてはと、少女は首を横に振った。時透はそれを見て安堵の息を吐きつつ、尚、Aに迫る。
「なら、ねえ、僕を見てよ。僕しか要らないって言って?」
激しい執着心を剥き出しにして、時透はAの首筋に顔を近づける。Aは背に壁があり、どうしても逃れることは出来ない。
罪悪感からAが唇を噛み締めた時、時透の後ろに人影があることに気がつく。
「同意もなく無理に迫るなんて駄目よ!」
それは顔を真っ赤に染めた甘露寺と、眉をしかめる伊黒だった。突然の出現に驚き弱まった手から、甘露寺はAを引き寄せ、伊黒は時透を床に転がし体術を持ってして封じ込めた。
「蜜璃ちゃん!伊黒さん!」
「大丈夫?Aちゃん」
「私は大丈夫だけど、どうして二人とも…」
「胡蝶に呼ばれたんだ。早く行け。こいつは俺が止めておく」
「…時透くんごめんなさい」
狂わせてしまったことへの謝罪をしてから、伊黒にも頭を下げAは甘露寺の誘導の下その場を去った。三回目の避難となると、自分が何も出来ないこと、むしろ状況を悪化させてしまうことが分かっていたからだ。
「ふん。行ったか」
「離してよ」
「聞けないな。今お前を放てば、あいつはまだしも甘露寺に何かあるかも知れん」
想い人の安全を第一優先にしたい伊黒はそれだけ言って、時透の体を留める力を強めた。
1743人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もみじ - めちゃめちゃ面白かったです!! (2022年8月1日 19時) (レス) @page30 id: 32f65dbc25 (このIDを非表示/違反報告)
ハッシュタグ(プロフ) - ななしさん» お読みいただきありがとうございます。今でも反応をいただいており、私としてもお気に入りの作品ですので、そう言っていただけて嬉しい限りです。もしまた機会があれば、読んでいただけましたら幸いです。 (2022年4月9日 0時) (レス) id: bcf3124c84 (このIDを非表示/違反報告)
ななし - 面白くて一気読みしました!語彙力が凄くて羨ましいです...!シチュエーションも神でした!これからも応援しています!! (2022年4月2日 17時) (レス) id: 05cc864757 (このIDを非表示/違反報告)
ハッシュタグ(プロフ) - 水城舞梨亜さん» 喜んでいただけて良かったです!リクエスト本当にありがとうございました…! (2020年10月22日 11時) (レス) id: bcf3124c84 (このIDを非表示/違反報告)
水城舞梨亜(プロフ) - いいいい伊黒さんかっこいい!!!です!\(^o^)/伊黒さんは、私の推しなんですが、こんなにかっこよく書いていただけて嬉しいです!!(*´ω`*)後、夢主ちゃんがかわそう…でもなんかすごいです!(語彙力)感情が無いようであって。凄く、本人にあってると思います! (2020年10月22日 8時) (レス) id: 0e4689ecab (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ハッシュタグ | 作成日時:2019年11月30日 19時