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「俺には嫁がいるからだろ」
「あ、ああ!確かに!私も村で話を聞いた人、家庭を持ってた!」
暴徒と化した村の男性から、家族を守ろうと斧一本で見張りをしていた人だ。それだけ家族を深く愛していたのだろう。
「じゃあ、この血鬼術に対抗できるのは、『愛する気持ち』ってこと?」
「だろうな」
「…ふーん」
思わぬ場面で宇髄の妻達への愛の深さを知ったAは微笑ましくて、思わず笑顔になる。
「宇髄さんって、お嫁さん達のこと随分好きなんだねえ」
「当たり前だろ」
「お、おう…」
少しは照れるかと思いAはからかったつもりだったが、存外普通に返されて逆にタジタジになってしまった。そんなAを呆れたように笑って、宇髄はこれからのことに話題を移す。
「それでこれからどうすんだ?」
「取り敢えず、しのぶちゃんが止めてくれている間に出来るだけあの部屋から離れて…」
「おい宇髄。人の女と何楽しくやってんだァ?」
いきなり影が降り、閉められた障子を開けて入ってきたのは不死川だった。部屋にAが居ないことに気が付き、三人はそれぞれ探しに来て、不死川は一番最初に彼女を探し当てたのだ。
「よお。不死川。お前今面白いことになってんだって?」
「何が面白いんだァ?俺はお前のせいで不愉快なんだがなあァ」
今にも刀を抜きそうなほど気が立っている不死川に、宇髄はAの話していた異常事態をようやく身をもって知った。
「し、不死川さん…」
「A、あんま俺に嫉妬させんな。オイタが過ぎるなら…仕置きしてやろうかァ?」
何処か甘さすら感じさせる言葉に、Aは殊更に体を震わせた。宇髄はそんな年下の同僚を庇うように前に立つ。
「あァ?お前も人の女の護衛気取りかァ?」
「いいや。俺には最高の嫁がもう三人もいるからな。こいつに用はねえが、気が動転したまま女に手ェ出すと後悔すんぞ?」
「それは手前ェの話か?」
「お前の話だよ、不死川」
それはいきなり始まった。不死川が予備動作無しに、右足で宇髄の横っ腹に蹴りあげたのだ。だが、宇髄は読んでいたようで、それを軽くいなし、Aに出ていくように進める。
「で、でも宇髄さんが…!」
「さっきの話だと、近くにいるとどんどんその血鬼術の深みにハマってくんだろ?早く行け!」
何も出来ない歯痒さを抱きながら、Aは礼を言って不死川が入ってきたのとは反対側の障子から廊下へと再び飛び出した。
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もみじ - めちゃめちゃ面白かったです!! (2022年8月1日 19時) (レス) @page30 id: 32f65dbc25 (このIDを非表示/違反報告)
ハッシュタグ(プロフ) - ななしさん» お読みいただきありがとうございます。今でも反応をいただいており、私としてもお気に入りの作品ですので、そう言っていただけて嬉しい限りです。もしまた機会があれば、読んでいただけましたら幸いです。 (2022年4月9日 0時) (レス) id: bcf3124c84 (このIDを非表示/違反報告)
ななし - 面白くて一気読みしました!語彙力が凄くて羨ましいです...!シチュエーションも神でした!これからも応援しています!! (2022年4月2日 17時) (レス) id: 05cc864757 (このIDを非表示/違反報告)
ハッシュタグ(プロフ) - 水城舞梨亜さん» 喜んでいただけて良かったです!リクエスト本当にありがとうございました…! (2020年10月22日 11時) (レス) id: bcf3124c84 (このIDを非表示/違反報告)
水城舞梨亜(プロフ) - いいいい伊黒さんかっこいい!!!です!\(^o^)/伊黒さんは、私の推しなんですが、こんなにかっこよく書いていただけて嬉しいです!!(*´ω`*)後、夢主ちゃんがかわそう…でもなんかすごいです!(語彙力)感情が無いようであって。凄く、本人にあってると思います! (2020年10月22日 8時) (レス) id: 0e4689ecab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハッシュタグ | 作成日時:2019年11月30日 19時