3 煉獄杏寿郎 ページ4
こんなことってあるんだなあ。
現実逃避しそうな意識を必死に手繰り寄せ、前でおいしそうに焼き芋を頬張るその人を見る。
「わっしょい!わっしょい!」
意味がわからない……。
何故この人、炎柱の煉獄杏寿郎様は神輿を担ぐが如く掛け声をかけながら芋を食っているのだろうか?
派手に頬張るものだから、その動作に合わせて先端に赤の入った蜂蜜色の髪が跳ねる跳ねる。
「いい食べっぷりだねぇ、お兄ちゃん」
「ああ。嬢ちゃんもほら、食べて食べて」
感心しているおばあ様の隣に立っていた男性が私に声をかけてくれる。差し出された右手には程よく焼け、甘い香りを振りまく焼き芋が握られていた。
生唾を飲み込みながらも遠慮の姿勢を見せる。
「いえ。お礼していただけるようなことは何もしていません」
「いやいや。さっき俺が荷物をぶちまけちまった時、拾ってくれたのは嬢ちゃんだろう?」
確かに、先程大通りで私はそうしたが、特別お礼を言われることでは無い。当たり前のことをしただけだ。
「うむ。少女よ!」
「は、はい!」
「あまり遠慮するのも失礼に当たってしまうぞ!」
た、確かに!!
煉獄様の言葉に、無意識に働いていた無礼に気づき急いで頭を下げ芋を受け取る。皮を剥き黄金色の中身にかぶりつけば、口の中に心地よい甘みが広がった。
「お、美味しいです……!!」
「おお、そりゃあ良かった」
「良かった、良かった。ああ、お兄ちゃん、食べ終わったかい?おかわりはどうだい?」
いただきます!と元気に返事をして、煉獄様は二つ目の芋に齧り付いた。
「わっしょい!」
もしかしてあの掛け声は、美味しいという意思表示なのだろうか?
「うんうん。美味しそうに食べるねえ、あの子は」
「木の剪定をしてくれたんだろう?今どきの若者も捨てたもんじゃないなあ」
しみじみと話す二人の後ろには高い木が生えていた。植物には精通していないため、名前はわからないが、未だ残る葉が、焚き火の残骸に混じる葉と同じため、剪定した葉と枝でこの芋を焼いたのは明白だった。
話を聞く限り煉獄様はたまたま通りかかり、木を見上げるおばあ様に話しかけ、二つ返事で剪定を引き受け頼りない梯子一つを足場に一人で全て終えてしまったらしい。偶然出会った市井の方を手助けするとは、剣の腕がたつだけでなく優しさまで持ち合わせているなんて何とも素敵な御仁だ。
そう思いながら私は、芋の最後の欠片を口に入れた。
(太陽のように眩しく温かい青年と遭遇…?)
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ハッシュタグ(プロフ) - ロトさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけ本当に嬉しいです。そして、応援いただきありがとうございます。次回作も、ご期待に添えるよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いします! (2019年11月14日 6時) (レス) id: 9cd03d1863 (このIDを非表示/違反報告)
ロト - 続きです。次回作も勝手ながら毎日読ませていただきます!どちらも今からすごく楽しみです!!無理をしないよう頑張ってください!長々と失礼しました! (2019年11月14日 1時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
ロト - コメント失礼します。完結おめでとうございます!この小説を一日の終わりに読むと何だか心が暖かくなってホワホワして大好きでした!!実は完結の文字を見た時、少し寂しかったので次回作の予告を見て安心しちゃいました!長くなったので続きます。 (2019年11月14日 1時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハッシュタグ | 作成日時:2019年10月18日 18時