◆ 魔女狩り ９ ページ10
＊
翌日。
私は今、暗くじめっとした路地裏を、敵連合の拠点(アジト)へ向かって歩いていた。
理由は勿論、敵連合唯一の女友達であるトガちゃんに訓練をつけて貰うため。
パパ以外の人に何かを頼むのは久し振りで、やっぱり緊張する。
一歩進む度にドキドキと胸が鳴って、今にも足が止まってしまいそう。
……私ってこんなに意気地無しだったかしら？
「あぁ、トガちゃんには何て言えば……、嫌われてしまわないと好いのだけど」
ぽつりとそう呟けば、手土産のお菓子の入った紙袋が、私を勇気付けるようにガサリと音を立てる。
反対側の腕に掛けられた大きめの鞄には、着替えやらシューズやらが入っている。
訓練と言うからには、いつもの非戦闘向けの服装では到底無理だと判断して、動きやすいショートパンツも持参した。
「……、はぁ」
拠点の前で一歩立ち止まり、深呼吸をする。
私の長い髪は編み込んで一つに結い上げられ、立ち止まった振動にふわりと揺らめいた。
「こんにちは、黒霧さん」
「……あぁ、Aさん。丁度珈琲を淹れたところなんです。是非如何ですか？」
カランと小さなドアベルが鳴って、心地よい冷気と優しく苦い香りが体を包む。
息を吐いて視線を上げると、カウンターに居た黒霧さんが珈琲カップを取り出したところだった。
彼の問いに「ええ、頂くわ」と答え、私はバーの中を見渡す。
苦い香りの正体はこの珈琲だったらしい。
死柄木さんは珍しく留守みたい。
黒霧さんの淹れる珈琲はとてもパパのそれに似ていて、優しさや温もり、苦み、それと何処までも続く深淵を混ぜて溶かした味がする。
私は彼の珈琲が大好きだけど、今日はその為に来たんじゃない。
手土産を黒霧さんに手渡し、カウンターの椅子に腰掛けながら私はそっと手を組んだ。
「……ところで黒霧さん、トガちゃんが何処に居るか知らない？」
「そうですねぇ……、あと十五分もすれば来ると思いますよ。あれでも彼女は真面目ですから」
黒霧さんは、ふっと目を細めて扉の方へ視線を移す。
つられて其方を見やれば、軽い音と共に珈琲の入ったカップが差し出された。
「どうぞ」
「……ありがとう」
トガちゃんが帰ってくる十五分間、黒霧さんと彼の珈琲と共に過ごそう。
手の中に包み込んだ黒い熱をちゃぷんと揺らして、ぼんやりとそう思った。
＊
ラッキーアイテム
革ベルト
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白林檎(プロフ) - 猫夜桜((シラキさん» 素敵なコメントありがとうございます！ まだまだ拙い文章ですが、楽しんで頂けたなら嬉しいです(*´艸｀*) 更新頑張ります…！ (2018年9月26日 6時) (携帯から) (
レス) id: b3533b2202 (このIDを非表示/違反報告)
猫夜桜((シラキ(プロフ) - めっちゃいい作品じゃないですか！！最高！とても面白かったです！更新頑張ってくださいね！！応援しています！！ (2018年9月26日 2時) (レス) id: 4588ab3ba5 (このIDを非表示/違反報告)
白林檎(プロフ) - fogliaさん» わぁあ、温かいコメントありがとうございます…！ そう言って頂けて嬉しいです、これからも面白い作品作りに励みます！◎ 作者の体調まで心配して下さって…。本当にありがとうございました！ (2018年9月14日 18時) (携帯から) (レス) id: b3533b2202 (このIDを非表示/違反報告)
foglia(プロフ) - 癖でいつも高評価してしまいます…！とても好きです。どうか無理はせず頑張って下さい。 (2018年9月14日 17時) (レス) id: d019805116 (このIDを非表示/違反報告)
白林檎(プロフ) - ミリイ(灰崎信者)さん» コメントありがとうございます。現在多忙につきこれ以上の掛け持ちは更新停止に陥りかねないと判断しておりますので、そのリクエストにはお応え出来ません…。本当にごめんなさい！ 作品内で番外編として登場させる事は可能ですので、一度ご検討ください(OO;) (2018年9月10日 10時) (携帯から) (レス) id: b3533b2202 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白林檎 | 作成日時：2018年8月20日 16時
