暁紅の月 (ページ1)

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your side

日が昇る少し前。朝になりきれていない世界。

シーツに彼の残り香が染みついている。
煙草の煙たい匂い、微かに甘い香りがする。

彼の影を濃く感じる。
けれど、シーツは冷たく洗いたてだったワイシャツも無い。

ほんの少し開いたカーテンから空を見る。
東のほうが白みがかっているが、星は一つと見えない。

静寂の時の片隅に、私は一人佇み想い焦ぐ。

手を伸ばしても、決して握ってはいけない。
彼の骨骨とした大きな手。細い指先。

ならばせめて、触れたいと思ってしまった。
彼の温かな胸の中に閉じ込められたいと思ってしまった。

求めたところで最後に残るのは虚無感のみ。

だとしても、なんて思ってしまったのだ。

自分の熱でほんのり温まった布団に包まり
彼の香りで瞼を閉じた。

目を覚ますころには彼がいれば、なんて束の間の想いと共に。