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熱心に世話をしろとか、欲しいものを全部買い与えろとか、そんな面倒で手間のかかることを要求するわけではない。
家族として、親としてたった一言「大丈夫？」と気にかけてくれることが望みだった。
四つ年の離れた弟に向けられる愛情の一端が、その一言が、何よりも欲しくて欲しくてたまらなかった。
阿部さんと異なるのは、私の場合、その環境はいわば因習のようなもので、自ら望んだワケではなかったということ。
私はバカだから、風邪を引くたびに「今度こそは優しくしてもらえるかもしれない」といつまでも両親への針の先ほどの希望を諦めきれず、どこかで期待していたのだ。
当然毎回惨敗した挙句、風邪の辛さと両親からの塩も塩すぎる態度に、体力的にも精神的にもノックアウトされ、最後は隠れて半べそをかきながら、しおしおに干からびてベッドに潜る。
中学を卒業する頃まではその繰り返しだった。
誰もいない深夜のキッチンに忍び込み、冷蔵庫から盗むように拝借した冷えピタを真っ赤になった額に貼り、適量が分からず氷を入れすぎて寝心地の最悪な氷枕を用意し、寒さに震える身体をどうにか温めようとタンスから服を何枚も引っ張り出して着れるだけ着込む。
薄っぺらい布団の中でダンゴムシのように丸まりながら「大丈夫、大丈夫だよ」と欲しかった言葉を自分自身の掠れた声で何度も言い聞かせて耐えていた。
そんなことばっかりだった。
考えないように、思い出さないようにしてたけど、私はずっと、そうやって生きてきた。
平気なフリ。
慣れたつもりでいたけど、心は常に泣いていたし、悲鳴を上げ続けていた。
「こういう風にしてもらいたかった。
私のことを、心の底から心配してくれる誰かがいて欲しかった」
それがずっと、憧れだった。
自分に素直に、正直にそう言葉を紡ぐ。
そしたら安心したのか、頬を滑り落ちるように涙がぽろっと一つ落ちた。
私は慌てふためきながら素早く涙を拭こうとした。
ヤバイ、こんな感傷的になるはずじゃなかった。
だけど阿部さんはそれを優しく引き止める。
そして動揺することなく穏やかに微笑むと、指の腹で涙を優しく掬った。
「風邪引くと心細くなるよね」
「いやほんと…すんません」
「ぜんぜん気にしないでいいよ。Aさんには俺がいるから」
「またまたぁ〜」
すぐに私を揶揄うんだから。
そう言うつもりだったのに、
「何かあったら俺が守るって、最初に約束したでしょ」
彼に、先を越されるなんて。
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泥濘(プロフ) - ちいさいばあばあさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなりまして申し訳ありません。話の展開がゆっくりですが、引き続き今後の展開を見守っていただければ幸いです。 (2月25日 22時) (
レス) id: 014ca7ae0d (このIDを非表示/違反報告)
ちいさいばあばあ(プロフ) - あべちゃんとマネちゃんが付き合う事になるといいですね。 (2月14日 17時) (レス) id: b4b34b6799 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泥濘 | 作成日時：2024年1月25日 0時
