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「一応言い訳というか弁明をさせてもらうと、ほら、ありがたいことに思春期を迎える前からテレビのお仕事させてもらってたでしょ。自分がやりたいと思った事だし不満なんて何一つ無かったんだけどさ……最近ラウールとか、もっと若い後輩を見てると、もうちょっとうまく学生時代を過ごせたんじゃないかって思うこともあるんだよね」
まあ結果論だけど、と阿部さんはやや大袈裟に肩をすくめた。
布団を一定のリズムでトントンと優しく叩きながら、彼の瞳はカーテンを閉め忘れた窓の外、暗闇に数個ほど淡く光を放ちながら点在する星々に向けられる。
「学校行事はお仕事で休みがちだったし、誰かと堂々と付き合うとか、手を繋いで歩くとか……まあ、俺はそういうの無かったけど、でも少女漫画みたいな甘酸っぱさみたいなものも含めて一般的なベタなシチュエーションは経験できなかっただろうね」
「…後悔、してる？」
「どうだろ。その分普通じゃ出来ない事も沢山させてもらってたから一概には言い切れないし…難しいね」
知らなかった。
ほとんどの人が羨ましいと感じる人生を歩む阿部さんも、そう考えることがあったなんて。
私も大学生になってから阿部さんと同じ世界に入ったけど、比較的融通の効く生活だったから、何かを我慢したり犠牲にしたりするようなことはなかった。
これが中学とか高校になってくると、また少し話が変わってくるわけだ。
華々しく見える芸能活動の一方で、阿部さんや他のメンバーは学校とか、交友関係とか、恋愛とか、私たちが年相応に経験を重ねる色んな青春を諦めてきてたんだ。
阿部さんは特に真面目な性格だから、我々が『ベタだ』と形容する事象のほとんどを、きっと自ら避けていたに違いない。
渇望とまではいかなくとも、何にしても後ろ髪引かれる思いはしてきたはずだ。
「Aさんが苦しんでる時に、なんかごめんね」
たゆたうように彷徨う視線がこちらへ戻るなり、こんな時に不謹慎だよね、と彼は苦笑しながら詫びるように眉を下げた。
確かに、彼の言う通りかもしれない。
阿部さんと同じように結果論として過去を振り返るとすれば、私も私で、家族に対する王道的なシチュエーションを羨望していた時期がある。
例により表立って「家族」を頼りにできない環境ではあったが、それでも、やっぱり私もただの人間なので、弱っている時には人知れず、見えない穴に突き落とされるような孤独感と寂しさを感じることもあった。
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泥濘(プロフ) - ちいさいばあばあさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなりまして申し訳ありません。話の展開がゆっくりですが、引き続き今後の展開を見守っていただければ幸いです。 (2月25日 22時) (
レス) id: 014ca7ae0d (このIDを非表示/違反報告)
ちいさいばあばあ(プロフ) - あべちゃんとマネちゃんが付き合う事になるといいですね。 (2月14日 17時) (レス) id: b4b34b6799 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泥濘 | 作成日時：2024年1月25日 0時
