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どちらともなく繋がれた手は、どちらともなく自然と離れる。
私はそこでようやく薬を飲まなければならなかったと思い出し、しっかりと2錠を飲んだあと、空になったコップを阿部さんへ渡した。
彼は当たり前のように受け取り、そのままキッチンへ向かう。
目線で追いかけ、見えなくなると同時に背後から「もう寝るでしょ？」と声が聞こえたので体をひねって振り返った。
「うん。もう薬も飲んだしお腹いっぱいになったから寝る」
オープンカウンター越しに目が合った阿部さんは、私の体調を一通り見て問題ないと感じたのか小さく頷いた。
「そしたらこの作業台のところに、買ってきたお粥も出しておくから、おせちと一緒に食べられる時に食べてね」
言いながらカウンター越しにこちらに見せてきたのは、コンビニでもよく見かける、温めるだけのレトルトパウチのお粥だった。
「えっ、それまで買ってきてくれたの？マジでごめん。あの、今度ゼリーのお金とかちゃんと払うから」
「いーのいーの。俺が勝手に押しかけて、好き勝手世話焼いてるだけだからね。てか、差し入れのお代貰うとか人としてないから」
「……そりゃそうか」
「でしょ」
言わせんな、と彼は鼻を鳴らした。
「ちなみにお粥の味なんだけどさぁ、普通の塩味？と梅とシャケと卵あるから好きなのどうぞ〜」
「待って、めちゃくちゃ多くない？」
何食分買ったんだ。
トランプのババ抜きをしているみたいに扇状に重ねたそれを見せられ、種類と数の多さにたまらず吹き出してしまった。
それを見た阿部さんの頬がぷくっと膨れる。
おそらく彼のことだから、好みが分からないのであれば全部買ってしまえ！とでも思ったのだろう。
「だってAさん何が好きか分からなかったんだもん」
「やっぱり。だからって買い過ぎ」
「保存効くみたいだし、食べなかったら備蓄すればいいじゃん」
「それもそっか。とにかく、ありがと」
そう伝えれば、阿部さんの顔は分かりやすく明るくなった。
「風邪を引いた妹のために、お兄ちゃん張り切っちゃった」
えっへん、と阿部さんがわざとらしく胸を張って見せたので、煽てるように「お兄ちゃん最高ー」と拍手をするとさらに得意気な顔になる。
もはやこのやりとりが懐かしく感じた。
本物の弟とは、私が高校を卒業した頃からろくに会話をしていない。
彼には申し訳ないが、私にも、こんな風に普通に接してくれて、ときどき優しく甘やかしてくれるお兄ちゃんが欲しかった。
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泥濘(プロフ) - ちいさいばあばあさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなりまして申し訳ありません。話の展開がゆっくりですが、引き続き今後の展開を見守っていただければ幸いです。 (2月25日 22時) (
レス) id: 014ca7ae0d (このIDを非表示/違反報告)
ちいさいばあばあ(プロフ) - あべちゃんとマネちゃんが付き合う事になるといいですね。 (2月14日 17時) (レス) id: b4b34b6799 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泥濘 | 作成日時：2024年1月25日 0時
