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眉間に軽く皺を寄せるその様子は、知らない人が見れば怒っているように見えなくもない。
でも大丈夫。
これは阿部さんが何かを思い出したり、考えたりしている時の仕草だ。
やがて彼はゆっくりと喋り始めた。
「でも普通だと思うよ。お粥作ってもらって、氷枕用意してもらって、おでこに冷えピタ貼ってもらってた」
「おお、至れり尽くせり」
「ふふ、今考えたらそうだね。そういえば俺、小学生の時までは弟も両親もみんなで同じ部屋で寝てたなぁ。風邪のときもそこで休ませてもらうんだけど、母さんが掃除の邪魔だからって俺が寝たままの布団ごと引っ張って部屋の隅っこまで移動してくれるの。
なんでか分からないんだけど、あれがたまらなく好きだったのを思い出した」
笑顔で話しながら、時折懐かしむように目を細める阿部さんに、胸がギュッと苦しくなった。
多分それは、絵に描いたような素敵な家庭でご両親に愛されて育った彼に対する羨望と、私みたいな環境で育たなくて良かったという安心感。
阿部さんの穏やかな性格や普段からの立ち振る舞いを見ていれば、どれだけご両親に大切にされて育ったかなど想像に容易い。
残念ながら私が経験出来なかった「家族」として過ごす日常や行事のほとんどを、阿部さんは当たり前に経験してきている。
「いいなぁ」
素直に口に出せば、笑ったまま、阿部さんの眉尻が困ったようにやや下がった。
「Aさんはさ……お母さんに優しくされたかった？」
そう聞かれ、首を傾ける。
そういうの、考えたこともなかったし、考えないようにしていた。
「うーん…どうだろ。正直なんとも言えないかな。仮にお粥を作ってもらったとしても、氷枕や冷えピタを用意してくれたとしても、普段の私への態度というか、根本が変わらなければ手放しに喜べないかな。
むしろ突然優しくされたらお粥に毒でも盛ったか！ついに殺されるのか！ってめちゃくちゃ警戒したと思う」
ここは笑って欲しかったが、阿部さんは極めて真面目に耳を傾けながら深刻そうな顔で頷いた。
「まぁでもそうだなぁ…もし私の親が阿部さんのお母さんみたいな人だったら『やめなさい！』って怒られてもコアラみたいに足元にしがみついて『風邪だから優しくしてっ！』ってアピールしてめちゃくちゃ甘やかしてもらってたかも」
「そっか」
「うん」
言いながら、なぜだか泣きそうになった。
鼻を啜り、誤魔化すようにエヘヘと笑えば、阿部さんもそれに釣られて笑ってくれた。
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泥濘(プロフ) - ちいさいばあばあさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなりまして申し訳ありません。話の展開がゆっくりですが、引き続き今後の展開を見守っていただければ幸いです。 (2月25日 22時) (
レス) id: 014ca7ae0d (このIDを非表示/違反報告)
ちいさいばあばあ(プロフ) - あべちゃんとマネちゃんが付き合う事になるといいですね。 (2月14日 17時) (レス) id: b4b34b6799 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泥濘 | 作成日時：2024年1月25日 0時
