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手を握り、指先を絡めたまましばらく私を観察した阿部さんは、やがて私の言葉を本心だと判断したようで、フッと肩の力を抜くとふわりと微笑んだ。
アーモンド型の三白眼の美しい瞳が、三日月の形に変化する。
「それならよかった」
考え、咀嚼し、納得するだけの間があったということは、私はおそらく阿部さんの意とした質問を──三択問題を間違えたらしい。
でもそれが結果的に良かった。
顔を突き合わせるほどの距離で安堵した阿部さんはいつもの、私がよく知る「あざと可愛い阿部さん」だった。
そこから先、彼がさっきみたいに意味深に私の指の背を撫でてくることも、深層を抉るような眼差しを向けることもなかった。
「どうしたの？怖い顔して」
「え、なにが？」
「皺寄ってる」
ここ、と阿部さんが空いている方の手で私の額をおもむろに指差したことで、自分が初めて彼を睨んでいたことに気が付いた。
全く自覚がなかった。
慌ててかぶりを振り、今指摘されたばかりの眉間の皺に触れる。
人差し指と中指で上から押さえつけるように揉みほぐさなければ戻らないほど、しっかりと顰めっ面をしていたらしい。
ヤダな、もう。
私が眉間の皺と戦う必死な様子を、彼は風邪による気疲れと捉えたようで、ホントお疲れ様と私を労った。
二人だけの空間。
微笑む阿部さん。
握られた手。
考えた途端、ごくりと喉が鳴った。
違う。
おかしいのは阿部さんではなく、私だ。
風邪を引いているから。
きっとそのせいで、私の彼に対する感情が、情緒が、おかしな方向に暴走しかけているんだ。
阿部さんはいつも通り、「妹分である」私と向き合ってるだけ。
それを、妖艶だのいやらしいだのと扇状的に受け取るなんて、そっちの方がよっぽどいやらしい。
どうしようもない申し訳なさと一緒に、悟られる前に何がなんでも誤魔化さなければという焦燥感に駆られる。
「ねえねえ、阿部さんは小さいときに風邪引いたらどうしてもらってた？」
「えっ、俺？」
「うん。聞きたいし、知りたい」
あまりにも急すぎる話題の転換に、阿部さんが一瞬呆けたような顔をした。
そしてすぐに「あんな話をした後で、人の──おそらく一般的な家庭の──話を聞くの？」と私を気遣ってか不安気な表情に変わる。
こちらから振る話題としては悪質だが、そこを私が無理やり押し切って「聞きたい」とせがめば、彼は勢いに押されたように視線を左側に動かし、唇をやや窄める仕草を見せながら「うーん」と唸った。
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泥濘(プロフ) - ちいさいばあばあさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなりまして申し訳ありません。話の展開がゆっくりですが、引き続き今後の展開を見守っていただければ幸いです。 (2月25日 22時) (
レス) id: 014ca7ae0d (このIDを非表示/違反報告)
ちいさいばあばあ(プロフ) - あべちゃんとマネちゃんが付き合う事になるといいですね。 (2月14日 17時) (レス) id: b4b34b6799 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泥濘 | 作成日時：2024年1月25日 0時
